ロングライド ~主観的な分析でのリミッターの見つけ方~【BBC】

【初心者のためのヒント】【立ち読み版】【速くなるためのヒント一覧】2016年10月28日 15:08

■リミッターを見つける:主観的な分析

体力の構成要素のうち、あなたの強みになっているものと、目標達成の妨げになっているものはどれでしょうか?アスリートと面談をすると、たいていのケースで、強化すべき領域が見つかります(それを裏付けるパワー値がわかると、より効果的です)。ただし、リミッターを細かく見極めるのは簡単ではありません。多くの場合、複数の基礎的な体力要素が(それぞれの度合いは異なるものの)弱点の原因になっているからです。もし高度な体力要素の1つがリミッターである場合、その能力を支えている基礎的な体力要素に注目しなければなりません。これらの基礎的な体力要素こそが、真のリミッターなのです。

アスリートの妨げになるものは、他にもあります。これらには、サイクリングの体力とは直接的な関係がないものも含まれます。たとえば、トレーニングに費やせる時間、栄養、仕事のストレス、悪天候などです。サイクリストは、トレーニングと、それ以外の生活とのバランスを保たなければなりません。生活のストレスは、トレーニングそのものだけでなく、トレーニング負荷からの回復や適応にも大きな影響を及ぼすことがあります。栄養や休養も、体が日々のトレーニングに耐えていくために、重要な役割を果たしています。

これらについては、他の要素も含めて、「その他のリミッター」のセクションで後述します。以降のセクションでは、個人の強みとリミッターを判断するうえで役立つ、よくある状況について見ていきましょう。

■ロングライド

レースや練習で、ある程度は集団についていけるが、最後まではついていけない場合、確固とした持久力の土台が構築されていないことや、効率が十分に高まっていないことが考えられます。集団内の他の選手よりも呼吸が荒くなっていれば、それはおそらく他の選手の方が体力の上限が高いためであり、同じペースであっても、彼らの方が低いゾーンで走っていると考えられます。ベーストレーニング中にも、これと同じような状況を経験することがありますが、それは体力の上限が下がっているためであり、問題ありません。しかし、体力がピークに達しているはずの時期に同じ状況が生じるのであれば、体力の上限を支えるべき基礎的な持久力と効率が不足していると考えられます。ベーストレーニングをすべき時期に、ハードな走行練習をしているサイクリストをよく見かけます。彼らは、レース期ではない時期に体力のピークや好調状態に達することがありますが、ピークが本当に必要なレース期にもそれを維持できるケースはほとんどありません。その理由は、基礎的な体力要素の強化を怠っているためです。基礎期には、高速で走る人のことは気にせず、自分にとって必要な練習を続けましょう。

持久力はサイクリングに必要な体力のさまざまな側面に影響しているため、ほとんどの選手にとって、ある程度のリミッターになっています。毎年、基礎的な体力要素のためのトレーニング期間をしっかりと設けておらず、ベース体力の練習でも実際にペースが少し落ちてしまっているのであれば、それは持久力の構築が不足していることを意味します。これは最終的に、長距離のレースを完走する能力や、短時間のハードな練習を繰り返す能力に悪影響がおよびます。結局のところ、サイクリングとは持久力のスポーツなのです。

集団走行では、他の選手を風よけにして、ここ一番のときのために「マッチ」を節約しましょう。効率よく走らなければ、エネルギーを浪費し、必要以上にパワーを使うことになります。風よけをうまく利用できていないのであれば、1番苦手な技術を練習するための時間を設けましょう。他のサイクリストをうまく風よけにする技術は、サイクリングの生命線です。他の選手のすぐ後ろを走ることに不安を覚えるのなら、基礎期ではその練習を優先して行うようにします。

私は毎年、トレーニングの開始が遅いアスリートを見かけます。当然ながら、これらのアスリートは持久力を効果的に高められません。コーチにとって、指導の問い合わせが最も多い時期は春です。重要なレースが夏に開催されるのであれば、前年の秋にはトレーニング計画を立てておくべきです。しかし、重要なレースの8週間前になって、トレーニングを始めたいと私のところにやってくるアスリートは少なくありません。これでは、高度な体力要素を支えるための基礎的な体力要素を鍛える時間が足りません。ベーストレーニングには、8?24週間をかけましょう。長距離のレースを目指してトレーニングしている人や、サイクリングを始めたばかりの人は、基礎期を長めに設定します。基礎的な体力要素を十分に構築していれば、9週間程度、高度な体力要素を集中してトレーニングすれば、体力の上限を高く引き上げることができます。

補給も、長距離レースの完走を妨げる要素になることがあります。走行中に補給食やドリンクの摂取が不十分だと、糖質が枯渇してペースが落ちてしまいます。また脱水症状に陥ってもペースが落ちてしまいます。

持久力は、スポーツによって異なります。私は、ランナーとしては優れた実績を残しながら、自転車に転向した後で、自転車に固有の持久力を鍛えるために苦労していた選手を何人も指導したことがあります。彼らはよく発達した有酸素能力を持っていましたが、筋肉の適応はランニング特有のものでした。ウルトラ系の耐久レースに向けてトレーニングをしているのであれば、当然ながら持久力は最も重視すべき要素です。また、持久力はリミッターでなくても優先度を高くすべき要素でもあります。完走に12時間以上もかかるレースに向けたトレーニングで、十分な練習時間や準備ができないと悩むアスリートもいます。彼らの場合、トレーニング時間がリミッターになっています。このような場合でも無理をせず、現実的に考えることが大切です。週末に多くの時間をとって距離を積み上げ、優先度の高いレースに向けて適切に準備をしていきましょう。

ウルトラ系の耐久レースでのパフォーマンスは、適切なペース配分と補給戦略にも左右されます。序盤から飛ばしすぎ、補給を十分にとらなければ、ゴールまでに2~3時間以上かかるレースでのよいパフォーマンスは期待できません。

 

※この記事は、『ベース・ビルディング・フォー・サイクリスト』児島修訳・OVERLANDER株式会社(原題:『BASE BUILDING for CYCLISTS』トーマス・チャップル著・velopress)の立ち読み版です。『ベース・ビルディング・フォー・サイクリスト』は、『サイクリスト・トレーニング・バイブル(CTB)』を下敷きにした、1年のなかでも最も重要でありながら、最も理解されにくい時期でもある「基礎期(ベーストレーニング期)」に、どのようにトレーニングすべきかを詳しく掘り下げた好著です。■

 

著者紹介

トーマス・チャップル

ウルトラフィット・コーチング・アソシエイト。USAサイクリングおよびUSAトライアスロンで、公認コーチとしてエリートレベルの選手のコーチを行っている。1997年に専業のコーチとなって以来、指導してきた選手は、全米および世界のレースで優秀な成績を収めてきた。チャップルの指導した選手は、ハワイのアイアンマン世界選手権のエイジ別入賞やアマチュア部門での優勝、全米プロ/エリート・クリテリウム選手権の上位入賞、NORBA全米シリーズの年代別部門、24時間単独マウンテンバイク・レースの優勝などの栄光に輝いている。

トレーニングやサイクリング関連の定期刊行物、ウェブサイトに定期的に記事を寄稿。そのコーチングスタイルは、短期・長期の目標への到達を目指すトレーニングプロセスにフォーカスしながら、バランスと一貫性を重視していくというものである。選手時代は、全米レベルのダウンヒルのマウンテンバイク・レースや、地元のロードおよびトラック競技の選手として活躍した。詳細は、ウェブサイト(www.coachthomas.com)を参照。

 

訳者紹介

児島 修

1970年生。立命館大学文学部卒(心理学専攻)。スポーツ、ビジネス、ITなどの分野で活躍中。訳書に『サイクリスト・トレーニング・バイブル』(OVERLANDER株式会社)、『シークレット・レース』(小学館文庫)、『マーク・カヴェンディッシュ』(未知谷)などがある。