肉体の疲労と疲労感(脳の疲労)は必ずしも一致しない ~疲労感に関する「4分の3理論」~

【ヒルクライム・上り】【疲労・回復・睡眠】2012年8月24日 07:00

疲労のメカニズムはまだ完全には解明されていないといわれている。TV番組で「FFという疲労物質が見つかった」との報道があったが「これで疲労の全て解明された」と考えるのは早計かも知れない。「疲労に関係すると言われている物質の増減(筋肉の疲労)と疲労感(脳の疲労)は必ずしも一致しない」との研究結果もあり、疲労は複雑なメカニズムにより起こっているというのが実際のようだ。この「疲労感(脳の疲労)」については「4分の3理論」という興味深い説がある。■この記事は、旧サイトからの移行分です(2011.10.03の記事です)■

 

疲労感に関する「4分の3理論」

■総距離や時間の4分の3あたりで疲労を感じることが多い

ヒルクライムの時やローラーでの1時間TTをした場合に、総距離や時間の4分の3あたりで苦しくなった経験はないだろうか。これは、100m走の70mあたりできつくなることや、マラソンでは30㎞あたりで足が動かなくなることがあるのとよく似ている。ここからわかるのは「距離に関係なく『行う』と脳が認知している総距離の4分の3程度のあたりで人は疲労を感じることが多い」ということだ。

■脳が運動の全行程の4分の3あたりに疲労感が出るポイントを設定している可能性がある

運動生理学者はこの理由を「運動中に筋肉が蓄えている燃料を使い切ることを避けるために、脳が運動のタスクの重さに応じてどこで疲労を出すかを設定しているから」と説明している。この説を取れば、脳は運動の際に全行程の4分の3あたりに疲労感が出るポイントを設定しているということになる。

■「ニセ」の疲労感を発生させないには、ひと工夫が必要

つまり実際は疲労物質などが増加していないのに疲労感が発生しているケースもあると考えられ、この場合は苦痛に耐えればそのまま運動は続けられる。

そのような「ニセ」の疲労感を発生させないためには、「目標設定を長めに置いて実際は早目に切り上げる」など脳が設定するプログラムを書き換えるようひと工夫する必要があるだろう。

 

参考文献

  • 桜井智野風著・『ランニングのかがく』・P90~91・秀和システム