[ PR ] サイクリストとして知っておきたい、閾値についての基礎知識  ~LT、MLSS、AT、FTPとは?~[ sponsored by Pioneer ]

【FTP・LT・VO2max】【立ち読み版】2018年10月8日 00:15

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サイクリング歴が長い人なら、「乳酸閾値(LT)」や「無酸素性作業閾値(AT)」という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。他にも、「有酸素性作業閾値(AeT)」「最大乳酸定常値(MLSS)」、新しいところでは「機能的作業閾値パワー(FTP)」などの用語を目にしたこともあるかもしれません。これらの用語は、トレーニングゾーンの設定や体力の進捗把握のために、年間トレーニングを通じて用いられる重要な指標を指します。ただし、それぞれ測定方法も、その意味するところも異なります。閾値が上昇すれば体力も向上します。私はこれを「体力の上限を引き上げる」と呼んでいます。

サイクリストが、これらの閾値で維持できるパワーには限界があります。各閾値でのパワーやスピードが高まれば、より速く走れるようになります。ただし、各閾値のトレーニング効果は異なる場合があるため、「測定の対象が何か」を把握することが重要です。

 

■乳酸閾値(LT)

厳密には、LTは血液中の乳酸値がアスリートのベースライン値を超えて上昇し始める地点を指します。コーチによっては、この閾値を「有酸素性作業閾値(AeT)」と呼びます。その理由の1つは、LTが、より高い強度を指すために使われる場合が多くあるためです。しかし「有酸素性作業閾値(AeT)」という表現は、運動生理学の分野ではあまり使われません。エネルギー代謝が有酸素から無酸素に変わる地点という意味にもとれるからです。有酸素性エネルギー供給機構と無酸素性エネルギー供給機構は同時に機能するため、この用語は誤解を招く可能性があります。コーチやサイクリスト、そして実験室の測定実施者さえ、LTよりもはるかに強度が高く、乳酸生産がはるかに多くなる地点をLTと呼ぶことが多いのが実情です。ですから、この低い方のLTを「LT1」、高い方のLTを「LT2」として捉えてもよいでしょう。

乳酸は、安静時でも生産されて血中に存在しています。自分のベースライン値を知っておいた方がよいのはこのためです。このベースライン値は血液1L あたりのミリモル(mmol/L)で示され、筋組織を激しく動かし、多くの糖質を消費させない限りは、低く安定しています。一般的なベースライン値の濃度の範囲は、0.07mmol/L~2mmol/Lです。ごく軽いペースとパワーで自転車をこぎ始め、3~5分おきに少しずつ運動強度を上げていくと、乳酸値は各自の安静時の正常範囲を超え始めます。乳酸の処理・消費が生産に追いつかなくなる地点です。LTは、乳酸値がベースライン値を1mmol/L超えた地点を指します。この地点から、乳酸値は運動強度に合わせて上昇し始めます。

運動強度を段階的に上げていき、3~5分ごとに血中乳酸値を測定することで、乳酸値が上昇する地点の運動強度と、(パワーと心拍数に対する)乳酸値の上昇率を示すプロフィールデータが得られます。乳酸値が上昇し始めるまでの時間は、長いほどよいといえます。有酸素の体力ベースが弱いアスリートの多くは、運動を始めてすぐに乳酸値が急激に上昇します。これは、主なエネルギー源が脂肪から糖質へ切り替わるのが早すぎることと、有酸素性エネルギー供給機構が乳酸の生産に追いつけていないことを意味し、その結果、乳酸と水素イオンが血中に蓄積されます。水素イオンは現在、ハードな運動を長時間続けると筋肉に感じる焼けつくような痛みの原因だと考えられています。この乳酸値の急上昇が、結果として体力の上限を押し下げてしまいます。有酸素性エネルギー供給機構が血液中の副産物(乳酸と水素イオン)を処理し切れず、運動のスピードを落とすか、停止しなければならなくなるからです。このような状態に陥るアスリートは、高強度のトレーニングを頻繁に行っている傾向があります。これらの選手に6 ~8週間程度、走行速度や運動強度を下げて練習させたところ、低強度付近での乳酸値や心拍数に有意な改善が見られました(図4.5を参照)。

図 4 . 5  トレーニング前後の乳酸プロフィール ベース・ビルディング・フォー・サイクリスト

 

このような練習により、選手は体力の上限を引き上げられます。つまり、速く、長く走っても、疲労を感じにくくなります。これは「速く走るためにゆっくり走る」という考え方の正しさを裏付けるものです。

LTは、漸増的負荷テストで3~5分ごとに少量の血液を採取し、血液分析により血中に存在する乳酸の値を調べて測定します。携帯型の乳酸分析器も数種類、販売されています。乳酸値を迅速に測定できる機器を使えば助手に補助してもらい乳酸を測定することができます。また運動生理学の実験室でも測定が可能です。

 

■最大乳酸定常値(MLSS)

最初の1mmol/Lの上昇後、漸増的負荷テストを続けると、乳酸値は急速に上昇し始めます。この地点をLTと呼ぶことも多くあります。測定者によっては、4mmol/Lなどの特定の血中乳酸値を、すべての人に当てはまるLTとして使用する場合もあります。この4mmol/Lという値は、パフォーマンスの変動の測定にも使用できます。具体的には、4mmol/Lを基準値とし、4mmol/Lでの心拍数とパワーを比較して、その乳酸レベルでのパワーの向上や心拍数の低下を確認することは可能です。ただしこの方法では、変化の原因を正確に見極める手順が複雑になります。つまり、4mmol/Lを基準にしてトレーニングゾーンを設定するのは、実用性と適切性の面から見て、あまりよい方法ではありません。

血中乳酸値を使って適切にトレーニングゾーンを設定するには、さらにテストを重ねて可能な最大運動強度を調べる必要があります。これは、一定の運動を60分間続けながら、血中の乳酸値を最も高く安定して維持できる運動強度(心拍数とパワーで計測)です。この測定の1つの方法として、一定の運動を継続しながら10分ごとに測定を行い、体が実際に乳酸の生産と除去のバランスを維持できているかどうかを検証するというものがあります。このバランスを維持できる最大運動強度を「最大乳酸定常値(MLSS)」と呼びます。これは、トレーニングの運動強度を設定するうえで、有効な基準値になります。運動による代謝で生じる乳酸や副産物の処理能力を上回る限界点、またはそのすぐ下にいることを確かめられるためです。この限界点上かそのすぐ下にとどまっていれば、長時間のトレーニングに耐えることができるので、代謝副産物の蓄積によるトレーニング負荷の増加を回避しながら、大きなトレーニング効果を得ることができます。

 

■無酸素性作業閾値(AT)

漸増的負荷テストをもとにしたトレーニングゾーンの決定には、無酸素性作業閾値(AT)を測定する方法もよく使われます。ATは、呼気ガス分析装置を用いて酸素を消費、処理(使用)する割合を調べて測定します。測定ではマスクで口と鼻を覆うか口にチューブをくわえて器具に空気を送り込みます。アメリカでは、各地の大学の実験室や運動試験施設にこのような測定器があります。携帯型の呼気ガス分析装置もあり、屋外で走行中にテストできます。ただし、これらの装置は非常に高価です。また、十分な経験のない人がテストを実施したり、器具の較正が正しく行われていなかったりすると、正しい測定データが得られない場合もあります。

ATを調べる際、テストの実施者やコーチは、乳酸値(採血による測定はしません)、心拍数、吸気酸素/呼気酸素、呼気二酸化炭素、呼吸数などのパラメーターを測定します。これらのデータをもとに、ATを決定します。なお、厳密には代謝が有酸素性エネルギー供給機構から無酸素性エネルギー供給機構に変わる明確な地点はないため、ATという名称を好まない運動生理学者もいます。有酸素性エネルギー供給機構と無酸素性エネルギー供給機構は(有酸素性作業閾値と同様に)同時に機能します。このため、実験室によってはこの地点を「LT」や「LT2」と呼ぶ場合もあります。どの名称が用いられているかにかかわらず、これは心拍数と、ある程度のパワーを用いたトレーニングゾーンの設定において基準点として使えます。用語が指しているものが何かをはっきりとさせ、各閾値が何を測定対象にしているのかを理解するようにしましょう。

これは、テスト中に一定の時間で運動強度を上昇させる漸増的負荷テストとして行う場合もあります。通常は心拍数に基づいて設定されるトレーニングゾーンは、AT心拍数に対する割合でも設定できます。このテストで使用される装置は、VO2maxの測定にも使えます。

ATを用いたトレーニングの運動強度の判断には問題点もあります。MLSSを正確に特定できず、推定値しか得られないという点です。ただし、完璧なトレーニングを計画するために何度もテストをする必要はありません。心拍数、パワー、RPEなどのパラメーターもトレーニングの運動強度の判断に役立ちます。乳酸テストが利用できれば、測定されたAT値のレベルからテストを開始し、運動強度を増減させていくことで、正確にMLSSの値を特定できます。

 

■機能的作業閾値パワー(FTP)

パワーメーターを使ってトレーニングの適切な運動強度を設定する場合、さまざまな持続時間において継続可能な最大のパワー出力をテストできます。これらのパワー値から、トレーニング目標に応じた適切な運動強度を判断できるようになります。そのうちの1つが、「機能的作業閾値パワー(FTP)」です。これは、60分間の全力走行で維持できる最大パワーのことです。パワーに基づくトレーニングの運動強度(トレーニング・ゾーン)は、この FTPに対する割合で決定することができます。以下のツールを使えば、パワートレーニング・ゾーンを簡単に計算できます。

FTP W

レベル

%:FTP比

パワー(W)

L1 回復走 ~55% W
L2 耐久走 56~75% W
L3 テンポ走 76~90% W
SST・スイートスポット 88~94% W
L4 LT(乳酸閾値) 91~105% W
L5 VO2max 106~120% W
L6 無酸素運動容量 121~150% W
L7 神経筋パワー -

 

トレーニング効果は、練習強度によってかなり違いがあります。ですから、トレーニングの効率を高めたいのであれば、「今、自分がいちばん強化する必要がある能力」を理解し、その能力向上に効果があると考えられるトレーニング・ゾーンに重点的に時間を配分することが重要になります。

下の表は、『パワー・トレーニング・バイブル』で紹介されている、FTPを基準にした各パワートレーニング・ゾーンで期待できるそれぞれの練習効果を示しています。「+」マークが多いほど、各項目における生理的適応(練習効果)が高いことを示しています。コーチや文献によっては異なる見解が示されている項目もありますが、トレーニング効率の改善を図るうえで参考になるでしょう。

 

パワートレーニング・ゾーン別の練習効果(生理的適応)の一覧表

 

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  • 記事出典:トーマス・チャップル著・児島修訳・『ベース・ビルディング・フォー・サイクリスト』(OVERLANDER株式会社)・P92~97の抜粋
    ※本件記事用に、本文を一部加筆修正しています。
  • 記事出典:ハンター・アレン、アンドリュー・コーガン博士共著・ 高嶋竜太郎訳・『パワー・トレーニング・バイブル』(OVERLANDER株式会社)・P78~79の抜粋
    ※本件記事用に、本文を一部加筆修正しています。
  • 参考情報:じてトレ・『パワー・トレーニング・ゾーン計算ツール【PTB】』
    http://www.jitetore.jp/contents/fast/list/201302041332.html
  • 参考情報:じてトレ・『トレーニング・ゾーン別の練習効果(生理的適合)の一覧表』
    http://www.jitetore.jp/contents/fast/list/plan/201206280700.html