優勝を狙うために強化すべきは「すべての弱点」ではなく「リミッター(目標とするレースに特有の弱点)」【CTB】

【期分け・練習計画】【立ち読み版】2014年9月25日 00:01

優勝を狙うために強化すべきは「すべての弱点」ではなく「リミッター(目標とするレースに特有の弱点)」

■リミッターをなくすことの重要性

レース・パフォーマンスは、自分の強みがレースで必要な能力と重なっているかが大きく影響します。レースで必要な能力が、すべて自分の強みと重なっていれば、トップを快走することも可能です。しかし、残念ながら、それは希なケースで、宝くじのようなものです。くじの番号が当選番号の 6つの番号のうち 5つと合っていたとしても、1つが外れていれば百万ドルの賞金は手に入りません。同じく、レースに必要な 3つの能力のうち 2つがあっても、それだけでは不十分です。足りないその 1つが、リミッターになってしまうことがあるからです。優勝を狙うためには、いくつか弱点があるとしてもリミッターをなくすことが重要です。強化すべきは「すべての弱点」ではなく、「リミッター」なのです。

■リミッターとは、目標とするレースに特有の弱点

リミッターとは、目標とするレースに特有の弱点です。たとえば、ヒル・クライムの多い優先度 Aのロード・レースに向けて練習しているとします。いつも、最後のヒル・クライムで他の選手に競り負けてしまいます。ヒル・クライムは弱点の 1つであり、この場合は明らかにリミッターになっています。ヒル・クライムのせいで、そのレースで勝つために必要なパフォーマンスを発揮できていないからです。スプリントなど他の弱点もあるかも知れませんが、このレースではリミッターにはなっていないはずです。ヒル・クライムとスプリントの 2つが弱点であっても、この重要なレースでパフォーマンスを妨げているのはヒル・クライムのみです。

本章では、レースの種類別に「必要な能力は何か」「その中で自分に足りないものは何か」について学べるでしょう。リミッターの強化方法については、後ほど説明します。

■レースに必要な3つの基礎能力

5章では、あらゆるスポーツに必要な 3つの基礎能力として、「持久力」「筋力」「スピード・スキル」について説明しました。これらの基礎能力の組み合わせは、山か平坦か、長距離か短距離かなど、レースの種類によって変わります。アスリートは、まずこの 3つの基礎能力に重点をおいて年間のトレーニングを始めます。また初心者にとっては、この基礎能力が最初の 1~ 2年の間に高めていくべき土台といえます。

まず、レースに必要な基礎能力を、三角形のそれぞれの「角」にあるものとしてイメージしてください(下図を参照)。本章では、この三角形をイメージしながら、詳しく説明していきます。これから、一見単純な概念に思える「持久力」「筋力」「スピード・スキル」の各用語について詳しく説明します。これらの用語をしっかり理解しておけば、今後、大いに役立つでしょう。

 

※この記事は、『サイクリスト・トレーニング・バイブル(CTB)』児島修訳・OVERLANDER株式会社(原題:『THE CYCLIST'S TRAINING BIBLE 4TH EDITION』ジョー・フリール著・velopress)の立ち読み版のランダム掲載分です。『サイクリスト・トレーニング・バイブル(CTB)』は、わかりやすく最も信頼のおける自転車トレーニング教本として名高い世界的ベストセラーの日本語版です。