効果的なブロッキングの方法

【レース対策情報・レース戦術】2012年5月14日 07:00

チーム・メイトがうまく逃げ集団に乗りそのまま逃げ切ることをサポートする場合には、ブロッキングを行うことが重要になる。ブロッキングとは追走集団を分裂させたりペースを乱したりすることで、ペース・アップを妨害する戦術のことだ。今回は、効果的なブロッキングの方法について紹介する。

 

ブロッキングの方法

■追走集団のリズムを崩すのが基本

追走集団が一致団結してスムーズに高速ローテーションをしていれば、追走速度は最速になり逃げ集団としては不利になる。ブロッキングの基本は、このリズムを様々な(危険でない)手段を使って崩すことといえる。首尾よくリズムを崩すことができれば、追走速度が遅くなり逃げ集団にとって有利に働く。

■先頭交代の番が来ても先頭を引かない

いちばんシンプルな方法は、先頭交代の順番が来ても先頭を引かずに、前走者が下がるのと一緒に後ろに下がってしまう方法だ。後続走者は「もう少し後ろで休める」と思っていたのが突然先頭を引く羽目になり、かなりリズムが狂う。ただし、この方法はあまりにもあからさまなので、集団の反感を買うリスクが高い点は注意が必要だ。

■2番目の位置に来た時に意識的にほんの少しスピードを落とす

一旦集団の反感を買ってしまうと先頭交代のペース・ラインから締め出され、ブロッキングをするのが難しくなる場合も考えられる。そこで、より長時間にわたって効果的にブロッキングするためには、なるべく気づかれないようにさりげなくペースを乱すほうが得策といえる。その方法の一つに、自分が先頭から2番目の位置に来た時に、意識的にほんの少しだけスピードを落とす方法がある。すると先頭の選手との差がじわじわと開いていき、後続集団の追走速度が若干遅くなる。ここで重要なポイントは、余りにもスピードを遅くしすぎると後ろの選手がすぐ前に出てきてしまい効果が薄くなるので、1~2㎞/h程度とほんの少しだけスピードを落とすようにすることだ。

■逃げ集団より少し遅いペースまで速度を上げて引く

逃げ集団の速度が正確に把握できていれば、率先してペース・アップをしつつ、実はブロッキングをしているという高度な方法が取れる。具体的には、追走集団の先頭に立って、あたかも逃げを潰すかのように先頭をグイグイ引いてペース・アップをする。しかし実際は、逃げ集団の速度よりもわずかに遅いペースまでしかスピード・アップをせず、その状態をなるべく長く保つというものだ。この方法は、いわば「ステルス・ブロッキング」ともいえるもので、集団がブロッキングを警戒している時などに、効果があるだろう。

■ゲート・キーパーを使って先頭交代に加わるメンバーを増やさないようにする

追走集団の先頭交代に加わるメンバーが多ければそれだけ一人の負担が減るので、追走スピードが速くなる可能性がある。そこで逃げをサポートする立場としては、なるべく先頭交代に参加する人数を増やさないようにすることが重要になる。集団に複数のチーム・メイトがいる場合は、一人がゲート・キーパーの役割を担うことで、他の選手がペース・ラインに参加することを防ぐ方法がある。具体的には、一人以上の選手がペースラインに加わり、あらゆる戦術を駆使してペース・ラインのリズムを乱す。その一方で、ゲート・キーパーが先頭交代のペース・ラインの最後尾に居座り、後続の選手が新たに先頭交代に加われないようにブロックする。

 

ブロッキングはタフな仕事

ブロッキングは逃げのチーム・メイトのために献身的にサポートする重要な仕事だが、集団の反感を買うとなかなか先頭交代に入りにくくなったり、イライラした他の選手から罵声を浴びせられたりするかも知れない。しかしそれでも何とかしてペース・ラインに入り込み、繰り返し繰り返しありとあらゆる方法を使ってブロッキングをし続けなければならない。その意味では、精神的にも肉体的にもタフさが求められる仕事といえる。

 

参考文献

  • E・ボリセヴィチ著・『勝つための自転車レーステクニック』・P130~132・並木書房
  • THOMAS PREHN著・『RACXING TACTICS FOR CYCLISTS』・P82~86・velopress
  • Robert Panzera著・『Cycling FAST』・P187~188・Human Kinetics