サイクリスト・トレーニング・バイブル【立ち読み版】vol.89 オーバートレーニングの各ステージ

【立ち読み版】2013年1月25日 06:30

オーバートレーニングの各ステージ

■第1ステージ:過負荷(オーバーロード)の状態

オーバートレーニングにいたるまでには3つのステージがあります。

第1ステージは「過負荷(オーバーロード)の状態」です。これは、通常レベルよりも高いトレーニング負荷に体を適応させる、正常な過程の一部です。負荷がきつくてもコントロールできるものであれば、10 章で説明したような「超回復」が期待できます。

このステージでは、一般的に短期的な疲労を感じますが、体調がよいと感じ、すばらしいレース結果を出せることもあります。また、「無敵だ」と思えるほど調子がよいこともよくあります。「やりたいことは何でもできる」というこの感覚が、次のステージにつながります。

■第2ステージ:オーバーリーチング

次の第2ステージは、「オーバーリーチング」です。前のステージと同じかそれ以上の「度を超えた高負荷」でのトレーニングを2 週間ほど続けた場合に起こります。

強化期の強度を高くして延長してしまうことが、オーバートレーニングのいちばんの原因です。この時点で、パフォーマンスは目に見えて低下します。通常は、レースを迎える前の練習中に兆候が現れますが、やる気十分の場合、たいていはそのまま練習を継続してしまいます。

「過負荷」のステージよりも疲れが残るようになっていきますが、数日休養をとれば、まだ回復は可能です。問題になるのは、「もっとハードに追い込む必要がある」と判断してしまった場合です。これが、さらに次のステージへとつながります。

■第3ステージ:オーバートレーニング症候群

最後の第3ステージは、本格的な「オーバートレーニング症候群」です。

ここまで来ると、疲労は慢性化し、影のようにつきまといます。起きた時から疲れを感じ、一日中、職場でも学校でも疲労感が抜けず、夜もいつも通りに眠れません。副腎の機能も低下します。

 

※この記事は、『サイクリスト・トレーニング・バイブル(CTB)』児島修訳・OVERLANDER株式会社(原題:『THE CYCLIST'S TRAINING BIBLE 4TH EDITION』ジョー・フリール著・velopress)の立ち読み版のランダム掲載分です。『サイクリスト・トレーニング・バイブル(CTB)』は、わかりやすく最も信頼のおける自転車トレーニング教本として名高い世界的ベストセラーの日本語版です。■

 

著者紹介

ジョー・フリールジョー・フリール

ジョー・フリールは、1980年から持久系アスリートを指導してきました。依頼者はアマチュアからプロのロードサイクリスト、マウンテンバイク選手、トライアスロン選手、デュアスロン選手、水泳選手、ランナーと多岐にわたります。米国内だけでなく海外の国内チャンピオン、世界選手権に出場するような一流選手、オリンピック選手など、世界中のアスリートが、フリールの指導を受けてきました。

本書以外にも、彼の著書には、『Cycling Past 50』、『Precision Heart Rate Training』(共著)、『The Triathlete’s Training Bible』『The Mountain Biker’s Training Bible』『Going Long: Training for Ironman-Distance Triathlons』(共著)、『The Paleo Diet for Athletes』(共著)、『Total Heart Rate Training』『Your First Triathlon』などがあります。また、フリールは運動科学の修士号を取得しています。

『Velo News』『Inside Triathlon』などの雑誌のコラムニストとしても活躍し、海外の出版物やウェブ・サイトにも特集記事を寄稿。スポーツ・トレーニングの権威として、『ニューヨーク・タイムズ』『アウトサイド』『ロサンゼルス・タイムズ』などをはじめとする、大手出版社などのメディアからも頻繁にコメントを求められています。また、米国のオリンピック関連の各連盟にもアドバイスを提供しています。

フリールは、持久系のアスリートのトレーニングやレースについて、世界中でセミナーやキャンプを行い、フィットネス産業の諸企業へアドバイザーとしても活躍しています。彼は毎年、もっとも将来性の高い優れたコーチを複数名選び、一流のコーチの仲間入りができるよう、彼らの成長を見守っています。

 

訳者紹介

児島 修

1970年生。立命館大学文学部卒(心理学専攻)。スポーツ、ビジネス、ITなどの分野で活躍中。訳書に『ベース・ビルディング・フォー・サイクリスト』(OVERLANDER株式会社)、『シークレット・レース』(小学館文庫)、『マーク・カヴェンディッシュ』(未知谷)などがある。