一流プロと体組成を比較 ファビアン・カンチェラーラ

【プロ選手のパワー情報】【空力・エアロダイナミクス・TT・下り】2012年1月16日 10:29

一流プロとの体組成比較シリーズ、今回は世界選手権個人タイムトライアルで2度2連覇を達成している現在世界最強のタイムトライアルのスペシャリストのひとり、ファビアン・カンチェラーラ(Fabian Cancellara)との体組成比較シートを紹介する。


カンチェラーラとの体組成比較シート

以下のExcelシートに身長・体重・体脂肪率を入力すると、入力身長と同数値で換算したカンチェラーラの体組成と比較できる(カンチェラーラの体脂肪率は不明であるためトップ選手の平均値5%を使用・また体組成を精緻に比較するには筋肉量や骨重量データが必要になるのであくまで参考値)。

カンチェラーラとの体組成比較シート→リンク


カンチェラーラの特徴

■身長が高くBMIも高い、典型的なタイムトライアル体型

カンチェラーラの特徴は、身長が186㎝と欧州プロ・ロードレーサーの平均身長180.22㎝よりも約6㎝程高く、BMIが23.7と欧州プロ・ロードレーサーの平均値21.1よりも2.6も高い点だ。顔や上半身が細く見えるので一見するとやせ型・小柄なクライマー体型ではないかとの印象を受けるが、実際は多少の風や悪路をものともせず突き進む典型的なタイムトライアル向けの体型といえる。

■豊富な筋肉量が独走力を支える

平坦路では、高速になるほど筋肉が多い(=体重が重い)ことが不利にならなくなるが、カンチェラーラの場合、大きな骨格についた豊富な筋肉量が圧倒的な独走力の原動力になっていると考えられる。


カンチェラーラのパワー

体重が重いと(=筋肉量が多いと)出せるパワーの絶対値が大きくなるが、カンチェラーラはいったいどの程度のパワーをだしているのだろうか。一例として、2010年のツール・デ・フランドルで、激坂「カベルミュール」でアタックし、あっという間にボーネンに20秒近い差をつけ、そのまま最後まで独走優勝した時のSRMデータをみてみよう。

■2010年のツール・デ・フランドルでのカンチェラーラのSRMデータ

  • 最大パワー 1,450 W(17.7W/kg)
  • 平均パワー: 285 W(3.5W/㎏)
  • 最高速度: 80.0 km/h
  • 平均速度: 40.0 km/h
  • 最大心拍数: 190 bpm
  • 平均心拍数: 143 bpm
  • 最大ケイデンス: 147
  • 平均ケイデンス: 73
  • 走行時間: 6' 22''

(出展URL:https://www.youtube.com/watch?v=s_OXoBbKv5c(以下動画))

■最大パワー:1,450W(推定17.7W/kg)

最大パワーは1,450W(推定17.7W/㎏*)を記録しており、これはおそらくボーネンを「カベルミュール」で千切った時の数字だと思われる。1,400W台という絶対的な数字の大きさが印象的であると同時に、パワー・ウェイト・レシオ**も、レース中のアタックにも関わらず、上級(カテゴリーⅡ)の5秒レベルとなっている。

さらに驚くべきは、これだけの強烈なアタックをかけながら、そこで足を使い切ってしまうことなく、ゴールまでの残り約15㎞を圧倒的な独走力で駆け抜け、最終的にボーネンに1分15秒もの大差をつけて優勝したことだろう。

*ウィキペディアに掲載の数値(体重82kg)で計算した推定値

**パワー・プロフィール一覧表・男性(Excelシート)→リンク

■カンチェラーラの「カベルミュール」でのアタック

以下のYouTube動画が、カンチェラーラが「カベルミュール」でアタックし、ボーネンをあっという間に置き去りにした時のものだ。ダンシングで苦しそうに上るボーネン(「坂の途中で脚が攣ってしまった」とのコメントを残している)と対照的に、シッティングのままグイグイと力強く駆け上がるカンチェラーラの姿が対照的だ。

 

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