もっと速くなるために参考になるじてトレ出版物の立ち読み版です。
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引く長さについて、明確な基準はありません。さまざまなことを考慮して、自分が引く長さを決めましょう。もちろん、好きなだけ引けるわけですが、疲れてペースが落ちはじめたら、落ち幅が時速1kmに満たないくらいであっても先頭を交代すべきです。
先頭のライダーはしばらく引いたのち、横にずれて先頭を譲ります。そのとき横風が吹いていたら必ず風上へずれること(図2.2)。絶対に、です。横風があるとドラフトの発生位置が風下側にずれるので、ライダーも風下に向けて斜めに並びます。だから、風上にずれないと、少しかぶっている後ろの人の前輪をなぎ払ってしまうのです。
本書から学ぶことをひとつだけにしろと言われたら、この章でしょう。自転車競技に必要なテクニックはいろいろとありますが、すべての基本となるのが、このローテーションです。たとえばライターとして成功したければ、どこかの時点で文字を習う必要があります。それと同じです。自転車レースでいい成績を収めたければ、くり返しになりますが、ローテーションが基本になるのです。
レースで自分自身が最悪の敵になってしまうこともあります。熱くなりすぎて頭がまっとうに回らなくなったりするのです。だから、レースが終わったらひとりで反省会をすべきです。失敗からは多くのことが学べますから。
トラックのスプリント競技では対戦相手とトラックの両方に目配りをしつつ、前を走る技量が必要になります。この競技を見たことがある人ならわかるでしょう。トラック3周のスプリント競技で残り1周半。前を走る選手は対戦相手から一瞬も目を離しません。離した瞬間にダッシュされ、レースが終わってしまうからです。この競技に熟練した選手なら、前を見ることなくトラックを周回することができます。風景も路面状況も、すべて、一定だからです。対してロードレースやクリテリウムは、変化するものが多すぎて後ろをふり返るのは危険です。スプリント直前にライバルの状況を確認しようと後ろをふり返ったら、道に穴があってクラッシュするかもしれません。目配りしなければならない相手がたくさんいるのも、トラックのスプリント競技と違う点です。
友だちとふたり、コロラド州ボールダーの北でトレーニングしたときのことを紹介しましょう。アップダウンの田舎道を一定ペースで走っていると、自転車が1台、1km近く先を走っていることに気づきました。そのままのペースで走ったので、自転車はだんだん近づいてきます。
レースが始まったら、周りで起きていることを細大漏らさず把握します。アタックしているのはだれか。それをブロックしている人はいるか。いるならだれか。集団の反応は? アタックを集団が追いはじめるタイミングは? 脅威となる選手が逃げているか。いるのに集団が動かないなら、自分でなんとかしなければなりません。勝負を分ける動きには瞬間的に反応しなければいけません。遅きに失すればおしまいです。
レースはスタートするより前に始まっています。まず、コースとライバルを確認しましょう。どういうコースなのか。特徴は? どんなコースにも、レース結果を左右するようななにかが必ずあります。ごくありふれたコースにも、です。ウォーミングアップをしながら、利用できそうな場所はないか探しておきましょう。過去のレースがどういう展開になったのかも確認しておくべきです。今回も似たような展開になる可能性が高いからです。
あの選手は、なぜ、いつも逃げに乗れるのだろうと不思議に思ったことはありませんか。同じように強くて速いほかの選手がなかなか逃げに乗れないのに、と。もちろん、フィットネスやねばり強さも問題です。あれだけアタックできれば逃げに乗れてもおかしくないよなと思うほどくり返しアタックする選手もいます。
1987年春、私は、レースに参加するサイクリストに向けたニュースレターを書きはじめました。プロフォーム・レーシングというニュースレターで、14年にわたる選手生活で学んだトレーニングや戦術を伝えるものです。みんなに、よくあるまちがいを避け、上手に走り、賢くレースを戦ってほしいと思ったのです。
