レースや練習中のカロリー摂取量の目安

【サプリ・食事・補給】【レース対策情報・レース戦術】2012年5月11日 20:05

長時間のロード・レースや練習では、パフォーマンスの急激な低下を防ぐために水分とエネルギー補給が欠かせない。しかし補給食をたくさん食べすぎると胃腸に過度に負担がかかり、結果としてパフォーマンスの低下につながってしまうリスクがある。それでは、長時間のレースや練習中にはどの程度のカロリーを摂取するのが適当なのだろうか。今回は、運動中の炭水化物摂取量の目安を紹介する。

 

運動中の炭水化物の酸化能力と消化・吸収能力のギャップ

■筋肉は1時間で800kcalの炭水化物を酸化できる

運動中のエネルギー補給でもっとも重要な栄養素は、消化吸収が早くすばやくエネルギーとして用いることができる炭水化物だ。筋肉には1時間で約200g(800kcal)*の炭水化物を酸化する能力があるといわれているが、その供給源は主に筋肉に蓄えられた筋グリコーゲンと運動前に摂取したパスタや補給食となる。

*実際には、体格や筋の酸化能力によって個人差があると思われる。

■運動中に摂取した炭水化物で使えるのは1時間あたり約120~240kcal

理屈としては、1時間に800kcalの炭水化物を摂取しそれを優先的に使うように仕向ければ、勝負どころで重要になる「筋グリコーゲン」を温存できるように思える。しかし実際には消化吸収能力がボトルネックになる。研究によると選手が運動中に摂取した炭水化物のうち、実際に消化・吸収してエネルギー源として使えるのは1時間あたり30~60g(120~240kcal)と考えられている。

■過度に補給食を摂るとパフォーマンスが低下するリスクがある

つまり、これを超えるペース(例:1時間ごとに500kcal)でカロリーを摂取しても、レース中には実際には使うことができない可能性が高い。それにも関わらず、過度に消化器に負担がかかり血流が取られることで、筋肉への血流が少なくなり肝心のパフォーマンスが低下してしまうリスクがある。

 

運動中のカロリー摂取量の目安

■補給量の目安は1時間あたり120~240kcalを目安に調整する

こういったことを踏まえると、長時間のレースやトレーニング中の補給食の量は、1時間あたり120~240kcal程度をおおよその目安として調整するとよいだろう。「レースやハードなチーム練の場合は1時間あたり50~60g(200~240kcal)摂取するのがよいだろう」と推奨するコーチもいる。

他方、消化・吸収能力や体格には個人差があることや、レース時間や強度によっても変わるので、適宜調整する必要がある。特に優先順位の高いレース前には、同じような距離・強度のレースに出場するか、チーム練習などでレースに近い状況をシミュレーションするなどして、「本番で、どの程度の補給が必要になりそうか」を事前に調べておけば、補給について心配せずにレース本番に臨めるだろう。

 

参考文献

  • Chris Carmichael AND Jim Rutberg共著・『The Time-Crunched Cyclist』・P101・Velopress
  • メルビン・ウィリアムス著, 樋口満監訳・『スポーツ・エルゴジェニック』・P184・大修館書店
  • Robert Panzera著・『Cycling FAST』・P169・Human Kinetics社
  • Edmund R. Burke, PhD著・『SERIOUS CYCLING Second Edition』・P142・HUMAN KINETICS