■■インタビュー:Team UKYOのパワートレーニング(2) 土井雪広選手 vol.1 「ヨーロッパではトレーナーを雇って5年間パワートレーニングに取り組んだ」■■

【パワトレ情報(その他)】【速くなるためのヒント一覧】2013年6月21日 18:13

Team UKYOインタビュー第2弾: 土井雪広選手 vol.1 「ヨーロッパではトレーナーを雇って5年間パワートレーニングに取り組んだ」

インタビュー日: 2013年4月20日(土) Text & Photo by キルシュベルク・インク

 

(上)インタビュー中の土井選手。チームTTを走り終えたばかりにも関わらず、幅広い話題について気さくに語ってくれた。

 

創設2年目となる今シーズン、Jプロツアー(JPT)開幕2連勝を飾り、2013年6月21日現在、JBCFポイントランキングの1~3位を独占するUCIコンチネンタルチーム、Team UKYO

チームは今シーズンよりサイクルオプスのパワーメーター、『パワータップ』をトレーニング機材として導入し、ここまでのJPTで「台風の目」的存在感を示しています。4月20日のJPT第2戦、南紀白浜チームTT後に、チームのエースであり現全日本チャンピオンである土井雪広選手に、アルゴス・シマノからTeam UKYOへの移籍の舞台裏から現在のパワートレーニング、そしてヨーロッパで成功する秘訣などを伺いました(3部構成のインタビューの第1回目です)。

 

■Team UKYOへの移籍の舞台裏

(上)TOJ東京ステージ前にメディア取材に対応する土井選手。大物揃いの舞台でも注目度は高い。

 

キルシュベルク・インク(以下『キルシュ』) 

Team UKYOに加入が決まる前ですが、国内外の他のチームからのオファーはあったんですか?

土井雪広(以下『土井』)

ガーミンとかカチューシャをはじめ、何チームかと交渉しましたね。なかでもガーミンとは結構詰めた話もしてたんですけど、最終的にはまとまりませんでした。

コトの始まりは、アルゴス・シマノから「来期は契約しない」って世界選手権の直前に言われたことだったんです。契約がなくなるということと、言われたタイミングがタイミングなんで、当時はかなり悶々としてました。

キルシュ

わざわざ世界選手権の直前での通達というのも、熾烈な世界の戦いのなかの仁義なき駆け引きということですか?

土井

もう完全そうっすね。で、そういう経緯もあって、もう辞めようかなって思ってたんですけどね。

キルシュ

え??プロを?

土井

自転車自体を。でもね、日本チャンピオンのジャージ着てるし。「まだヤメたらアカンな」と(笑)。

キルシュ

「半年しかチャンピオンジャージ着ない、そんなヤツおらん」と(笑)。

土井

そんなの前代未聞なんで(笑)。でも僕30なんですけど、コンチネンタルチームは平均年齢が28以下じゃないとだめなんですね。そしてどこのチームにも僕より上の年齢の人がいるし。

で、Team UKYOなんですけど、右京さんとは顔合わせたことはあったけど、しゃべったことはなかった。でもチームの以前のマネージャーは前から知ってて、「もしホントに契約なくなったら行っていいですか」とか言ってたことがあったんですよ。その縁もあって、右京さんに拾っていただいたんです。

 

■今年の目標や、ライバルの日本人プロ選手について

(上)Team UKYOの双頭、JPTリーダージャージのホセ・ビセンテ選手と全日本チャンプジャージの土井選手。

 

キルシュ

なるほど。帰国1年目となる今年の最大の目標は?

土井

全日本連覇はもちろんですが、あとはチームの目標でもあるけど、UCIレースでポイントを獲得することですね。北海道、熊野、沖縄の三大ツールに、あとはアジアのレースに出られればいいんですけどね。

キルシュ

いくら本場ヨーロッパ帰りでディフェンディングチャンピオンの土井選手でも、全日本連覇は簡単なミッションではないですよね。別府選手(オリカ・グリーンエッジ)や新城選手(ユーロップカー)ら強力なライバルもいますし。

土井

ユキヤは帰ってくるかどうか分かんないっすよ。もうツール決まってるみたいだし(編集追記: 新城選手は6月17日に全日本選手権への出場を発表)。フミは絶対帰ってこないっすよ。日本に興味ないですからね(笑)。

 

■若手に世界に向けて頑張って欲しい

キルシュ

土井さんや別府選手が向こうに渡ったのは何歳の時ですか?

土井

ハタチです。フミがディスカバリー(チャンネル)に入った年に、僕はシマノでプロになったんですよ。あん時とかはもうクソみたいに弱かったですね(笑)。学生の名残がまだ残ってたりしてね。

キルシュ

早い時期にヨーロッパに活動のベースを置くビジョンがあったわけですか?

土井

そうですね。今のコは遅いですよ。もっと早い段階から世界というものを見据えて走らないと。そういう意識の高い選手が下にいれば、上だって「しっかりやらなきゃ」ってなるし、国内全体のレベルアップにもつながると思うんだけど。

僕がシマノに入った時も、「ツール・ド・フランスに出よう」とか「世界に行って何千万稼いでやろう」とか思っている人がチーム内にいないわけですよ。

キルシュ

当時の国内ではそういうスケールでキャリアを想像することもなかなかできないくらい、実力面で世界との距離があったわけですね。

土井

そうですね。でも今って、海外には僕がいたし、フミ、ユキヤ、宮澤崇史(サクソ・ティンコフ)もいるじゃないですか。昔と違って、日本人が向こうで活躍するってことが十分想像できるようになったと思うし、海外がより身近になったはずなのに、世界に飛び込んでいこうという若手があまり出てこない。

若手に世界に向けて頑張って欲しいんですよ。

キルシュ

国内だけしか見ていないとレベルは上がりませんね。

土井

それでも僕らみたいなチームは、スポンサーから金銭面でも機材面でもサポートをしていただいて、それでこうやって選手活動以外のことを心配せずにレースを走っていられるんだけど…。本当にありがたい状況なんですけど、皮肉にもそれが国内プロのレベルが上がらない一つの理由なのか?って思ってしまうかも知れません。ハングリー精神が足りないのもあるんでしょうね。

キルシュベルクさんに提供してもらっているパワータップにしても、チームとしても選手としても、すごくありがたい話ですよね、考えてみれば。だからもっともっと有効活用して、僕らは強くならなきゃいけない。

 

■ヨーロッパではトレーナーを雇って5年間パワートレーニングに取り組んだ

(上)ウォームアップのローラー台に設置されたチームバイクとパワータップ。

 

キルシュ

パワーメーターというのはモノを渡してそれで「ハイ終わり」っていう代物ではなく、ちゃんとデータを解析して、それをトレーニングメニューの根拠としていかないと大きな効果は得られない機材ですからね。

土井さんはヨーロッパではパワートレーニングコーチを雇っていたんですか?

土井

トレーナーを雇って5年間やりましたね。当時のデータやトレーニングプログラムは今もちゃんと持ってて、今はそれに沿ってトレーニングしてます。そういうデータだったら全然提供しますよ。

キルシュ

自分のパフォーマンスデータを公開するということに対して、ライバルに手の内を見せるという抵抗はないんですか?

土井

ないですよ。だって、僕もう30っすよ(笑)。「さあ、これから!」っていう選手でもないし。それに僕のデータが若い選手の参考になって、それで国内の競技レベルが上がるんだったら痛くも痒くもないですね。でもさっきの話みたいに、どれだけそういった情報を貪欲に取り込んで、海外に出て行こうというゆとり世代の子が存在するのかは分からないですけどね(笑)。

キルシュ

土井さんはゆとり世代では…?

土井

僕はギリギリ(ゆとり世代の)上なんですよ。僕らはボコボコにやられてた最後の世代ですね(笑)。

キルシュ

キルシュベルクでは鹿屋体大の山本元喜選手や黒枝士揮選手にパワータップの機材サポートを行っていて、今彼らはU23ナショナルチームでヨーロッパ遠征中です。

土井

強くなるといいですね。そのためには早く向こうに活動のベースを移すことですね。それだけ向こうと日本ではレベルが違いますよ。

 

■本場のレースをもっと知るべき

キルシュ

逆に国内の競技レベルをヨーロッパに近づけるにはどうしたら?

土井

いろいろあります。日本は一般道路の規制が厳しいのですかね?良くそこら辺は分からないです。僕、今年初めて箱根駅伝を見たんですけどスゴイっすよ、あのオーガナイズ。選手が通過したらすぐに道路封鎖解除して車通して。まさにヨーロッパのロードレースの形ができあがってるっていう。

キルシュ

キルシュベルクのある西宮市でも以前マラソン大会が開催されたんですが、やはり交通や警備面のオペレーションが大変だったらしく、警察からは「開催はもう今回だけにしてくれ(怒)」って言われながらのやっとこさの運営だったそうです。正月のお茶の間に自転車レースが中継される日は相当未来のことになりそうです。

他に国内にいてできることは?

土井

本場のレースというものをもっと知るべきだと思います。各チームには戦略があって、それによってレース展開が台風のように動きます。それは日本でも同じですが、展開パターンはヨーロッパと日本では全然違うし、ヨーロッパ内でも国によって違う。

こっちの選手がヨーロッパ遠征でリタイヤが多いっていうのも、そこが大きな原因。でもそれは当たり前だよ、って(苦笑)。向こうのレースのリアルを教えられる人が本当に少ないんだから。

キルシュ

土井さんを含め、すでに名前の挙がった世界のプロツアーを知る4人がヨーロッパのレース文化をどんどん国内に紹介してくれませんか?

土井

僕はそういう場があれば、伝えていきたいですね。宮澤さんもそういうのに興味持ってると思うけど、すごい辛口な人だから(笑)。でもそれはね、自分が強くなるためだからしっかり耳を傾けてほしいなと思いますね。■

vol.2へ続く)

 

Team UKYOが使用するサイクルオプス製品(価格はすべて税込)

■ホイール:PowerTap G3搭載アルミホイールセット

最新パワータップモデル、G3が32組のWheelsmith製ダブルバテッドスポークとブラス製ニップルによってHayes製箱型断面リムに組み込まれたトレーニングホイール。トッププロのハードな使用にも耐え抜く高い剛性を誇る。

  • 品名:サイクルオプス・アルミホイール with PowerTap G3
  • 標準価格:158,000円(リア)/35,000円(フロント)

 

■心拍/パワー計:パワーキャル

心拍からパワーを算出する世界初の心拍ストラップ。実測式パワーメーターの約1/10の価格ながら、精度の高いデータ収集が可能で、発売から半年で国内累計1,500本を売り上げ、ブログなどでも取り上げられることの多い人気製品。

  • 品名:サイクルオプス・パワーキャル
  • 標準価格:12,000円

 

■サイクルコンピューター:ジュールGPS

世界でただひとつ、パワートレーニング用に開発されたサイクルコンピューター、『ジュール』の最上位モデル。豊富なデータ表示やトレーニング補助機能に加え、GPSや気圧高度計、磁気コンパスなど本格仕様の計器を備える。

  • 品名:サイクルオプス・Joule GPSサイクリングコンピューター
  • 標準価格:30,000円

■商品に関する問い合わせ先:キルシュベルク・インク