精神力がリミッターの場合  ~その他リミッターへの対処方法~【BBC】

【初心者のためのヒント】【立ち読み版】【速くなるためのヒント一覧】2016年11月18日 06:29

■精神力

リミッターは、体力だけではありません。長い距離を走るときには、たとえペースが特に速くなくても、疲労からくる不快さに耐えながら、「走り続けよう」と自分に言い聞かせなければなりません。もし身体的な能力がまったく同じサイクリストが何人かいたとしても、私は彼らがあらゆる状況で、同じレベルのパフォーマンスを発揮するとは思いません。なぜなら、パフォーマンスには精神力が大きな役割を果たしているからです。そしてそれが、向上の妨げになることもあるのです。

きわめて激しい運動では、ペダルを踏むパワーと同じくらい強い意志の力が必要です。私が指導してきた選手にも、ヒルクライムで集団についていけるだけのパワーを持ちながら、きつい上りで心拍数が上がると、苦しさを感じてペースを落とすケースが多く見られました。しかし、他の選手との違いは身体的なものではなく、精神的なものだということを理解すると、集団についていけるようになりました。

表彰台に上るには、最大心拍数に達するほどのハードな走りが必要だということを忘れてはいけません。最大限の力を出し切ったときに味わう類の苦しさを感じずにレースに勝てるようなら、カテゴリーを上げることを検討すべきです。ただし、レース中に心拍数を確認することはおすすめしません。データをダウンロードできる心拍計やパワーメーターを使っているのなら、レース後に心拍数を確かめましょう。

 

※この記事は、『ベース・ビルディング・フォー・サイクリスト』児島修訳・OVERLANDER株式会社(原題:『BASE BUILDING for CYCLISTS』トーマス・チャップル著・velopress)の立ち読み版です。『ベース・ビルディング・フォー・サイクリスト』は、『サイクリスト・トレーニング・バイブル(CTB)』を下敷きにした、1年のなかでも最も重要でありながら、最も理解されにくい時期でもある「基礎期(ベーストレーニング期)」に、どのようにトレーニングすべきかを詳しく掘り下げた好著です。■

 

著者紹介

トーマス・チャップル

ウルトラフィット・コーチング・アソシエイト。USAサイクリングおよびUSAトライアスロンで、公認コーチとしてエリートレベルの選手のコーチを行っている。1997年に専業のコーチとなって以来、指導してきた選手は、全米および世界のレースで優秀な成績を収めてきた。チャップルの指導した選手は、ハワイのアイアンマン世界選手権のエイジ別入賞やアマチュア部門での優勝、全米プロ/エリート・クリテリウム選手権の上位入賞、NORBA全米シリーズの年代別部門、24時間単独マウンテンバイク・レースの優勝などの栄光に輝いている。

トレーニングやサイクリング関連の定期刊行物、ウェブサイトに定期的に記事を寄稿。そのコーチングスタイルは、短期・長期の目標への到達を目指すトレーニングプロセスにフォーカスしながら、バランスと一貫性を重視していくというものである。選手時代は、全米レベルのダウンヒルのマウンテンバイク・レースや、地元のロードおよびトラック競技の選手として活躍した。詳細は、ウェブサイト(www.coachthomas.com)を参照。

 

訳者紹介

児島 修

1970年生。立命館大学文学部卒(心理学専攻)。スポーツ、ビジネス、ITなどの分野で活躍中。訳書に『サイクリスト・トレーニング・バイブル』(OVERLANDER株式会社)、『シークレット・レース』(小学館文庫)、『マーク・カヴェンディッシュ』(未知谷)などがある。