アスリートが直面する最大の問題、「望み通りのトレーニングをするための時間がとれないこと」 ~その他リミッターへの対処方法~【BBC】

【初心者のためのヒント】【立ち読み版】【速くなるためのヒント一覧】2016年11月14日 08:19

■時間

アスリートが直面する最大の問題は、望み通りのトレーニングをするための時間がとれないことです。私たちは、1週間、1日という限られた時間のなかで、仕事、家庭、人づきあい、諸々の用事(私の場合は本を執筆する時間も)を行わなくてはなりません。その忙しい日々のなかで、食事、トレーニング、シャワー、自転車の整備、パンクの修理、レースへの登録、見栄えのよいスパンデックス製ウェアの購入などをするための時間も捻出しなければならないのです。

サイクリストにとって、時間は常にリミッターです。しかし、限られた時間をうまく管理し、効果を上げることは可能です。1日のなかでトレーニングをする時間を決め、ルーチン化する方法もあります。早朝にトレーニングをすることも、トレーニング時間を確保するための効果的な方法です。私が指導したアスリートのなかには家庭を持ち、週50時間以上働いているという人も大勢いました。朝4時に起きて、家族がまだ眠っている間の数時間をトレーニングにあてている人もいます。早朝に練習をする場合は、早めに就寝して十分な睡眠をとることがきわめて大切です。

冬場は日照時間が限られているので、最長距離の練習は週末に組まざるを得なくなることがあります。早朝には、室内で練習することになるでしょう。

カテゴリー 2のサイクリストの多くは、プロのサイクリストと競えるようになりたいと考えています。しかし、カテゴリー2のサイクリストはたいてい、彼らの「もう1つの仕事」に週40数時間を費やさなくてはなりません。プロ選手の多くは、週に20時間以上のトレーニングを行っています。これだけの量のトレーニングを行う場合には、大きなトレーニング負荷から体を十分に回復させるために、睡眠時間を増やさなくてはなりません。アマチュアの選手が平日に4時間以上のトレーニングをしようとすれば、昼間の仕事に8時間、通勤に1時間、食事(支度を含む)、シャワー、睡眠10時間とすると、それだけで24時間を超えてしまいます。プロ選手と同じ量のトレーニングを、週末だけで行うことも不可能です。

目標は、現実的に設定しましょう。自転車競技を職業としているプロ選手はいますが、その他大勢の私たちはそうではないのです。トレーニングと日常生活のバランスをうまくとれば、サイクリングからさらに多くのものが得られるようになるでしょう。サイクリングを単なる趣味では終わらせず、プロの競技者になりたいと考えているのであれば、サイクリング以外の生活はできるだけシンプルにして、トレーニングやレースに集中できるようにしましょう。プロのアスリートとして成功するためには、プライベートの多くを犠牲にしなければなりません。

 

※この記事は、『ベース・ビルディング・フォー・サイクリスト』児島修訳・OVERLANDER株式会社(原題:『BASE BUILDING for CYCLISTS』トーマス・チャップル著・velopress)の立ち読み版です。『ベース・ビルディング・フォー・サイクリスト』は、『サイクリスト・トレーニング・バイブル(CTB)』を下敷きにした、1年のなかでも最も重要でありながら、最も理解されにくい時期でもある「基礎期(ベーストレーニング期)」に、どのようにトレーニングすべきかを詳しく掘り下げた好著です。■

 

著者紹介

トーマス・チャップル

ウルトラフィット・コーチング・アソシエイト。USAサイクリングおよびUSAトライアスロンで、公認コーチとしてエリートレベルの選手のコーチを行っている。1997年に専業のコーチとなって以来、指導してきた選手は、全米および世界のレースで優秀な成績を収めてきた。チャップルの指導した選手は、ハワイのアイアンマン世界選手権のエイジ別入賞やアマチュア部門での優勝、全米プロ/エリート・クリテリウム選手権の上位入賞、NORBA全米シリーズの年代別部門、24時間単独マウンテンバイク・レースの優勝などの栄光に輝いている。

トレーニングやサイクリング関連の定期刊行物、ウェブサイトに定期的に記事を寄稿。そのコーチングスタイルは、短期・長期の目標への到達を目指すトレーニングプロセスにフォーカスしながら、バランスと一貫性を重視していくというものである。選手時代は、全米レベルのダウンヒルのマウンテンバイク・レースや、地元のロードおよびトラック競技の選手として活躍した。詳細は、ウェブサイト(www.coachthomas.com)を参照。

 

訳者紹介

児島 修

1970年生。立命館大学文学部卒(心理学専攻)。スポーツ、ビジネス、ITなどの分野で活躍中。訳書に『サイクリスト・トレーニング・バイブル』(OVERLANDER株式会社)、『シークレット・レース』(小学館文庫)、『マーク・カヴェンディッシュ』(未知谷)などがある。