VO2max増加のメカニズム

【FTP・LT・VO2max】【LSD】2012年3月9日 17:35

レース・シーズンが近づくにつれて、レースの高強度に耐えられる体を作るためにL5(VO2max)での練習を行う機会も増えるかも知れない。VO2max(最大酸素摂取量)は全身持久力の重要な指標で、これが高いほどFTPの潜在的な上限も上がり、またL5のパワーはレースで重要なパワーレベルになるので、これを首尾よく上げることができれば、レースでのパフォーマンス向上が期待できる。それではVO2maxはどのようなメカニズムで向上するのだろうか。今回は『スポーツ運動科学』などを参考に、現時点で判明している*VO2max改善のメカニズムを紹介する。

*人間の体はひじょうに複雑で、まだすべてのことはわかっていないのでその点は注意が必要。


VO2max増加の要因

従来、運動生理学者は、VO2maxの増加は「最大心拍出量の増加」が要因であると考えてきた。最大心拍出量を向上させるのに代表的な練習方法としては、インターバルトレーニングが知られているが、これは比較的強度の高いトレーニングといえる。しかしVO2max改善のメカニズムの研究が進むにつれて、インターバルトレーニングよりも低い運動強度での持久系トレーニングの効果(ミトコンドリアや毛細血管の増加など)も、VO2maxの増加に関与していることがわかってきた。

VO2maxの改善は、大きく分けると以下の2つにより実現すると考えられている。

  • 中枢性適応(中枢適応メカニズム)
  • 末梢性適応(末梢性適応メカニズム)


中枢性適応

■心臓や血液の適応

「中枢性適応」とは、「心臓」や「血液」などの「トレーニングへの適応」のことで、具体的には以下の2つがある。

  • 最大運動時の心拍出量と1回拍出量の増加 
  • 中心血液量と総ヘモグロビン数の増加

■酸素を多く取り込み、なるべくたくさん送り出す能力が向上する

VO2maxは体が酸素を取り込める最大量のことだが、これを向上させるには、まずは血液になるべく多くの酸素を取り込んで、それをなるべくたくさん送り出さなくてはいけない。そのさいに「血液量やヘモグロビン量が多いこと」や「心拍出量・1回拍出量が多いこと」が役に立つと考えられている。


末梢性適応

■筋肉の細胞内などで起こる適応

トレーニングに対する身体の適応への理解が進むにつれて、注目されるようになってきたのが、「末梢性適応」のVO2maxの改善への影響だ。

「末梢性適応」とは、筋肉の細胞内などで起こるトレーニングへの適応のことで、具体的には以下の6つがある。

(1)骨格筋ミトコンドリアのサイズと数の増加
(2)ミオグロビンの増加(細胞内の酸素貯蔵量の増加)
(3)酸化酵素の増加
(4)骨格筋毛細血管密度の向上

(1)~(4)がまとまって以下の2つの適応が起こる。

(5)一定の最大化運動強度における心拍出量の減少(筋血流量の減少)
(6)最大下および最大運動強度における動静脈酸素較差の増加

■血流の有効利用により心臓への負担が少なくなる

持久系トレーニングによって(1)~(4)の適応が体に起こる結果、血流がより有効に利用されるようになり、筋肉にある細胞が受け取る血液量が少なくてすむようになる(結果的に心臓への負担が少なくなる)。また、動脈で送られてきた酸素を筋肉で使える量が多くなるので、静脈の酸素量がより少なくなり最大動静脈酸素較差が大きくなる。


VO2maxを向上させるのに効果的なトレーニング・ゾーン

■L5が特に効果的だがL2~L4も役立つ

パワー・トレーニング・バイブルのP79の表を参考にすると、「中枢性適応」に効果が高いのはL5で、「末梢性適応」に効果が高いのはL4~5と考えられる。しかし「L4やL5でしか効果がない」のではなく、「L2~3でも効果がある」と示されており、また『Time Effective Cycling Training』の著者であるジェスファー・ボンド・メデュウス氏も、LSDの効果として(1)(2)(4)を指摘している。

こういったメカニズムを踏まえると、VO2maxを向上させるには、L4~5(特にL5)でのトレーニングが効果的だが、L2~3でみっちり乗り込んでおくことも大いに役立つと考えられるだろう。

 

参照URL

参考文献

  • ギャレット/カーケンダル編, 宮永豊総監訳・『スポーツ運動科学』・P102, 103・西村書店
  • 青木純一郎, 佐藤佑, 村岡功編著・『スポーツ生理学』・P36・市村出版
  • ハンター・アレン アンドリュー・コーガン博士共著・『パワー トレーニング バイブル』・P79・OVERLANDER株式会社