トレーニングでの失敗 ~初心者からプロにいたるまで、ほぼ全員に共通してみられる7つの失敗~【CTB】

【初心者のためのヒント】【速くなるためのヒント一覧】2014年2月13日 06:22

トレーニングでの失敗

■初心者からプロにいたるまで、ほぼ全員に共通してみられる7つの失敗

多くのアスリートがまったく同じ失敗をするのを、驚くほどよく見かけます。以下に初心者からプロにいたるまで、ほぼ全員に共通してみられる失敗を 7つにまとめました。毎シーズン、必ずこのコラムに目を通すようにしてください。

 

■失敗その1 方向性がない

ほとんどすべてのアスリートは、目標を持っています。ただし、目標の多くには問題点が 2つあります。1つは、明確でないことです。よく見られるのが、「もっと速くなりたい」といった目標です。これでは、進歩の度合いを測ることができません。もう 1つは、ハードな練習やレースが始まると、目標を忘れてしまうことです。次のレースに向けた準備で頭がいっぱいになると、長期的な視点を忘れ、目先のトレーニングのことばかりを考えるようになってしまいます。

 

■失敗その2 レースに優先度が設定されていない

優先度がなければ、どのレースもきわめて重要なものだととらえることになってしまいます。特に、複数のレースの総合ポイントで最終順位が決まる形式のレースでは、この失敗が起きやすくなります。レースに優先度をつけなければ、本当のピークまでもっていく機会もなく、レースで自分に何ができるかをしっかり自覚することもできません。つまり、常に並の走りしかできなくなってしまうのです。

 

■失敗その3 鍛える対象が間違っている

アスリートの多くは自分の弱点をよく把握していますが、その克服のために熱心に練習しようとはしません。「鎖の強さは、いちばん弱い部分で決まる」ということわざにもあるように、自分の最大の弱点がヒル・クライムで、シーズン最重要レースが上りの多いコースならば、坂をしっかり上れるように時間をかけて練習しなければ、結果に響くことになります。上りの練習をおざなりにして、平坦なコースにばかり時間とエネルギーを使えば、練習は楽しいものになるかも知れませんが、もっとも弱い鎖の部分が改善されないままでは、レースでよい結果は出せないでしょう。

 

■失敗その4 早過ぎるインターバル・トレーニング

私は、5月までレースのないアスリートが、なぜ 12月に気合いを入れてインターバル・トレーニングを始めるのか理解できません。なぜ選手は、インターバル・トレーニングを早く始めたがるのでしょうか。そうでないことを願っていますが、心当たりのある読者の方も多いのではないでしょうか。インターバル・トレーニングは、シーズン後半に開始するようにしましょう。

 

■失敗5 休養不足

これは、サイクリストにもっともよく見られる失敗かも知れません。多少なりとも本格的にトレーニングに取り組む人なら、ほぼ全員がシーズンのどこかのタイミングで犯してしまう失敗です。この過ちがあまりにも多く見られるため、「持久系スポーツで成功している人には、特定の性格的特性を備えている傾向があるのではないか」と思ってしまうほどです。持久系スポーツの選手は、一生懸命練習すれば結果を出せることを、若い頃から学んでいます。このため、順調に進歩している時にも、さらに懸命にトレーニングします。また、調子が悪い時にも、必死になってトレーニングをします。「ハードな練習が、すべての問題を解決してくれる」と信じているのです。これでは、オーバートレーニングを避けるのは難しくなります(失敗 6を参照)。

 

■失敗6 疲労を無視する

持久系のアスリートは、自分をスーパーマンやスーパーウーマンだと信じているようです。「トレーニングをし過ぎて、休養が不十分だとオーバートレーニングにつながる」と頭では理解していても、「自分にはその影響は及ばない」と考えているようです。オーバートレーニングのサインが表れても、「たいした問題ではない」と考え、無視して練習を続けてしまいます。「私がオーバートレーニングに陥るはずがない」と信じているのでしょう。

 

■失敗7 大事なレースに備えてテーパリングをしない

この失敗が起こるのは、「重要なレースに向けたテーパリング方法を知らない」か「練習量を抑えることで体力が落ちることを恐れている」場合です。毎年、私は重要な試合がある週に、極端に長時間でハードな練習を行うアスリートを見かけます。レースのある週に休養をとることで、週末に最高の結果を出しやすくなることが理解できていないのです。

 

これらの失敗を防止するのは本来、コーチの役割です。コーチは、選手にちょっとした指導をしてこれらのミスを防ぐことで、レース結果に大きな効果があることを知っています。セルフコーチングを実践するあなたも、これらの失敗を予防することで、よいコーチと同じ役割を果たせるようになるでしょう。

 

※この記事は、『サイクリスト・トレーニング・バイブル(CTB)』児島修訳・OVERLANDER株式会社(原題:『THE CYCLIST'S TRAINING BIBLE 4TH EDITION』ジョー・フリール著・velopress)の立ち読み版のランダム掲載分です。『サイクリスト・トレーニング・バイブル(CTB)』は、わかりやすく最も信頼のおける自転車トレーニング教本として名高い世界的ベストセラーの日本語版です。■

 

著者紹介

ジョー・フリールジョー・フリール

ジョー・フリールは、1980年から持久系アスリートを指導してきました。依頼者はアマチュアからプロのロードサイクリスト、マウンテンバイク選手、トライアスロン選手、デュアスロン選手、水泳選手、ランナーと多岐にわたります。米国内だけでなく海外の国内チャンピオン、世界選手権に出場するような一流選手、オリンピック選手など、世界中のアスリートが、フリールの指導を受けてきました。

本書以外にも、彼の著書には、『Cycling Past 50』、『Precision Heart Rate Training』(共著)、『The Triathlete’s Training Bible』『The Mountain Biker’s Training Bible』『Going Long: Training for Ironman-Distance Triathlons』(共著)、『The Paleo Diet for Athletes』(共著)、『Total Heart Rate Training』『Your First Triathlon』などがあります。また、フリールは運動科学の修士号を取得しています。

『Velo News』『Inside Triathlon』などの雑誌のコラムニストとしても活躍し、海外の出版物やウェブ・サイトにも特集記事を寄稿。スポーツ・トレーニングの権威として、『ニューヨーク・タイムズ』『アウトサイド』『ロサンゼルス・タイムズ』などをはじめとする、大手出版社などのメディアからも頻繁にコメントを求められています。また、米国のオリンピック関連の各連盟にもアドバイスを提供しています。

フリールは、持久系のアスリートのトレーニングやレースについて、世界中でセミナーやキャンプを行い、フィットネス産業の諸企業へアドバイザーとしても活躍しています。彼は毎年、もっとも将来性の高い優れたコーチを複数名選び、一流のコーチの仲間入りができるよう、彼らの成長を見守っています。

 

訳者紹介

児島 修

1970年生。立命館大学文学部卒(心理学専攻)。スポーツ、ビジネス、ITなどの分野で活躍中。訳書に『ベース・ビルディング・フォー・サイクリスト』(OVERLANDER株式会社)、『シークレット・レース』(小学館文庫)、『マーク・カヴェンディッシュ』(未知谷)などがある。