瞬発力や筋力向上のための「筋トレ」のアプローチ

【筋トレ・ストレッチ】2012年9月25日 07:00

持久力の養成のためにはLSD(耐久走)やL3~L5のトレーニングを織り交ぜて毛細血管やミトコンドリアなどを発達させるアプローチがよく知られている。それではスプリントで必要になる「瞬発力」や、激坂で必要になる「筋力」は、どのようにすれば鍛えるのが効果的なのだろうか。今回は「筋トレ」の観点からみた、瞬発力や筋力向上のためのアプローチについて紹介する。

 

遺伝的な要素

■速筋と遅筋の比率は生まれながらにほぼ決まっている

筋肉でまずいちばん大きな違いがあるのは、繊維の組成によって「速筋」と「遅筋」に分かれる点だ。速筋の比率が大きいほうが、スプリントなどでは有利になる。

この比率はまず遺伝で決まることが知られており、トレーニングによって多少変動する可能性があるものの、大幅には変わらないといわれている。

■スポーツ遺伝子の影響

またACTN3(アクチニンスリー)という遺伝子は筋肉の構造に関係しており、このタイプが筋肉を速く強く収縮させるときの安定性に影響すると考えられている。

 

トレーニングで伸ばせる要素

それではこれらの先天的な素質意外にトレーニングで伸ばせる要素はあるのだろうか。結論としては「ある」といえ、大きく分けると2つのアプローチが考えられる。それは「筋肉量の増加」と「筋肉の『周辺装置』の強化」だ。

 

筋肉量の増加

■筋肉の分子構造は変わらない

意外に思えるかも知れないが、速筋や遅筋のどちらかにだけ注目してみると、筋肉の分子構造自体は、老若男女で変わらないことが知られている。つまり、トップアスリートの筋肉が特別な分子構造をしているわけではない。

■筋肉量が増えればパワーや筋力は大きくなる

分子構造に差がないので、その量が増えればその分だけ出せるパワーや筋力が大きくなる。

 

筋肉の「周辺装置」の強化

遺伝的な要素や筋肉量以外に、瞬発力や筋力に大きく影響すると考えられているものには次の3つがある。

  • 運動に参加する運動単位の数

  • 筋肉が力を発揮するときの力の「立ち上りの速さ」

  • 腱の質

これらは、筋肉を取り巻くいわば「周辺装置」といえる。これらの性能や発達度合によって、筋肉が本来もっている能力をどの程度引き出せるかが決まるのだと考えられている。

■運動に参加する運動単位の数

筋肉の動きは運動神経によって制御されている。1個の運動神経が複数の筋繊維をまとめて制御しているが、これらをまとめたものを「運動単位(モーター・ユニット)」と呼ぶ。

この運動単位がいつでも100%使えてしまうと、ケガや極度の疲労につながるリスクがあるので、「防御機構」によって通常はそれらを100%使えないように制御されている。

■筋肉が力を発揮するときの「力の立ち上りの速さ」

力を入れ始めてから最大に達するまでには、ある程度の時間がかかるが、筋肉が力を発揮するときの「力の立ち上りの速さ(RFD:Rate of Force Development)」が向上すれば、瞬発力が向上する。

■腱の質

反発動作を使って「バネがある動き」をすることで大きなパワーを発揮できるが、この「バネ」としての役割を果たすのが「腱」だ。腱の長さが長いほど多くのエネルギーを蓄えられるので、よりバネのある動作が可能といわれている(黒人は腱が長いことが知られている)。また腱の「粘性抵抗」もバネのある動きに影響していると考えられている。

 

周辺装置の強化に有効と考えられる筋トレ

■高重量での筋トレ

1RMの90%のような高重量で筋トレすると、神経のリミッターが少しずつ外れていき、使用できる「運動単位」の数を増やせることが、多くの研究で確かめられている。この方法はいわば神経系のトレーニングであり、筋肥大を伴わず筋力を高められる方法なので、パワー・ウェイト・レシオの向上に役立つ効果が期待できる。

注意点としては、高重量での筋トレはケガのリスクが高いので、トレーナーの指導を受け、適切に取り組む必要がある点だ。

■プライオメトリクス・トレーニング

「力の立ち上りの速さ(RFD)」の向上に有効な練習方法のひとつに、プライオメトリクス・トレーニングがある。具体的な練習メニューとしては、ボックス・ジャンプやスクワット・ジャンプといったものがある。

 

高負荷での筋トレやプライオメトリクス・トレーニングでは、筋肉のコーディネーション能力や動作の巧みさといったスキルの向上も期待できる。これらも筋力やパワーの向上にに役立つと考えられている。

■腱の強化

高負荷の筋トレで筋が太くなると腱が硬く強くなることが知られている。腱が硬くなるとRFDが高くなるというプラス効果がある。

他方、バネ作用の利用効率が下がるという点や、腱が硬いと切れやすくなるといったマイナスの影響もあるので、その良し悪しの判断はやや難しいといえそうだ。

「トレーニングの腱への効果」の研究はまだ歴史が浅く、まだ不明な点が多いといわれているので、今後の研究成果が待たれるところだろう。

 

参照URL

参考文献

  • 谷本道哉の「筋トレなんでも相談室」・トレーニングマガジン vol.21・P56~58・ベースボール・マガジン社
  • 長谷川裕著・『スポーツ動作と身体のしくみ』・P38~39, P82~83・ナツメ社