スピード・スキルのトレーニング方法 ~シーズンを通した全体の流れ~【CTB】

【期分け・練習計画】【立ち読み版】2014年10月14日 00:01

スピード・スキルのトレーニング方法 ~シーズンを通した全体の流れ~

■冬場にドリルを繰り返す

筋力と同じく、スピード・スキルを磨けばペダリング効率が上ります。特に冬場には、ドリルを繰り返すことで大小様々な筋肉に収縮と弛緩の正しいタイミングを覚え込ませます。ペダリングに関連する筋肉がうまく運動し活性化することで、貴重なエネルギーを節約できます。持久力や筋力と同様、スピード・スキルのトレーニングも、レースのスケジュールに合わせて晩秋から初冬に開始し、シーズン中は一定の水準を維持するようにします。

■巧みなペダリング・スキルとは

エコノミーには、「ペダリング中にどのくらい効率的に足を動かせるか」というバイオメカニクス(生体力学)が大きく影響します。これは神経系の働きであり、体力よりもスキルに注目する必要があります。たとえば、巧みなペダリング・スキルは、若干の「アンクリング」がベースになります(下図を参照)。

【ペダリングのバイオメカニクス:足のポジションと合力】

キャバナーとアンダーソンのD 許可を得て掲載(1986年)

足首を、くぎ抜きのようにガチッと固めるのではなく可動性のあるヒンジ(蝶番)のように使うのです。平坦路では、アップストロークの途中で足首が少し伸び、12時付近ではかかとがつま先よりも少し高く上がります。ダウンストロークでは足首の角度が少し狭まり、3時付近ではかかとはつま先と平行もしくはやや下になります。ヒル・クライムでは、アンクリングがもっと顕著になることがあります。

■注意点

スピード・スキルの向上に取り組む時は、いくつかの動きのパターンを補正し、長めの休憩を挟んで再度確かめます。疲れがたまって集中力が切れる前に切り上げるのがベストです。テクニックに集中できなくなると上達するのは難しくなり、むしろ悪い癖がついてしまいます。

バイオメカニクス面に変更を加えるのには、デメリットもあります。始めた当初は動きが鈍くなったり、「いつもより頑張らなくてはならない」と感じたりすることがあるのです。この移行期は数週間続くこともありますが、徐々にスムーズになっていきます。その後は、同じ労力でより速く走れるようになりますが、それまでは我慢が必要です。

 

※この記事は、『サイクリスト・トレーニング・バイブル(CTB)』児島修訳・OVERLANDER株式会社(原題:『THE CYCLIST'S TRAINING BIBLE 4TH EDITION』ジョー・フリール著・velopress)の立ち読み版のランダム掲載分です。『サイクリスト・トレーニング・バイブル(CTB)』は、わかりやすく最も信頼のおける自転車トレーニング教本として名高い世界的ベストセラーの日本語版です。■

 

著者紹介

ジョー・フリールジョー・フリール

ジョー・フリールは、1980年から持久系アスリートを指導してきました。依頼者はアマチュアからプロのロードサイクリスト、マウンテンバイク選手、トライアスロン選手、デュアスロン選手、水泳選手、ランナーと多岐にわたります。米国内だけでなく海外の国内チャンピオン、世界選手権に出場するような一流選手、オリンピック選手など、世界中のアスリートが、フリールの指導を受けてきました。

本書以外にも、彼の著書には、『Cycling Past 50』、『Precision Heart Rate Training』(共著)、『The Triathlete’s Training Bible』『The Mountain Biker’s Training Bible』『Going Long: Training for Ironman-Distance Triathlons』(共著)、『The Paleo Diet for Athletes』(共著)、『Total Heart Rate Training』『Your First Triathlon』などがあります。また、フリールは運動科学の修士号を取得しています。

『Velo News』『Inside Triathlon』などの雑誌のコラムニストとしても活躍し、海外の出版物やウェブ・サイトにも特集記事を寄稿。スポーツ・トレーニングの権威として、『ニューヨーク・タイムズ』『アウトサイド』『ロサンゼルス・タイムズ』などをはじめとする、大手出版社などのメディアからも頻繁にコメントを求められています。また、米国のオリンピック関連の各連盟にもアドバイスを提供しています。

フリールは、持久系のアスリートのトレーニングやレースについて、世界中でセミナーやキャンプを行い、フィットネス産業の諸企業へアドバイザーとしても活躍しています。彼は毎年、もっとも将来性の高い優れたコーチを複数名選び、一流のコーチの仲間入りができるよう、彼らの成長を見守っています。

 

訳者紹介

児島 修

1970年生。立命館大学文学部卒(心理学専攻)。スポーツ、ビジネス、ITなどの分野で活躍中。訳書に『ベース・ビルディング・フォー・サイクリスト』(OVERLANDER株式会社)、『シークレット・レース』(小学館文庫)、『マーク・カヴェンディッシュ』(未知谷)などがある。