乳酸除去能力を高めるトレーニング方法

【トレーニングメニュー】2012年6月27日 07:00

ロード・レースではレース中にいかに乳酸を発生させないか(筋グリコーゲンを温存するか)と同時に、発生した乳酸を速やかに処理する能力がひじょうに大切になる。今回はスポーツサイエンスの『ラクティック・アシッド(乳酸)と上手く付き合う方法』などを参考に、乳酸の除去能力を高めるトレーニング方法について紹介する。

 

乳酸とは

■乳酸は「疲労物質」ではなく代謝の過程でできるエネルギー源

FTPを超える強度の高い運動をすると筋グリコーゲンの分解量が増え、筋肉内で大量に乳酸が生成される。乳酸は長い間「疲労物質」として厄介者扱いされてきたが、じつは代謝の過程でできるエネルギー源であり、生成された筋肉内で使われたり血液に乗って他の必要とされる細胞で使われたりする*。

*ただし疲労する運動強度で血中乳酸濃度は上がるので、「疲労の目安」になる。

■全身にエネルギー源として拡散できる

筋グリコーゲンが貯蔵されている筋肉でしか使うことができないのに対して、乳酸は血液に溶け込むことができるので血流にのって全身にエネルギー源として拡散することができるという優れた点がある。

■遅筋・心臓・呼吸筋がエネルギー源として好む

またこれは意外に思えるかも知れないが、ロード・レーサーにとって重要な遅筋・心臓**・呼吸筋は運動中に乳酸をエネルギー源として好むという。そこで、ロード・レースのように乳酸が大量に発生するようなレースに出場するのであれば、筋肉内で乳酸が大量に発生した場合に血液を筋肉に送り込んで乳酸を除去し(血液内にとりこみ)、全身にエネルギー源として拡散しエネルギー源として利用する(乳酸を血液中から除去する)能力を高めておけば、レースで有利に働く可能性が高いだろう。

**特に心臓は、運動が激しくなるにつれてブドウ糖の消費量は変わらないのに対して、乳酸の消費量が増える。

 

乳酸の除去能力を高めるトレーニング方法

■強度の高い運動と長距離トレーニングを組合せる

『ラクティック・アシッド(乳酸)と上手く付き合う方法』では、この「乳酸の除去能力」を高めるのに有効なのは、「強度の高い運動と長距離トレーニングを組合せたものだ」と説明している。その原理は以下のようなものだ。

■強度の高い運動の効果

強度の高い運動は、乳酸を運動中にエネルギー源として使う能力を高めるのに役立つ。これは体内に乳酸が十分体内に充満すると、乳酸をエネルギーに還元する酵素の分泌が促進されるからだ。また激しいインターバル・トレーニングによって循環器の機能が高まれば、酸素が体の隅々まで効率的に行きわたり血液の循環が高まることで乳酸を体中に分散しやすくなると考えられる。

■長距離トレーニングの効果

長距離トレーニングは、乳酸のそもそもの生成量少なくし筋肉から乳酸を除去するスピードを高める効果がある。長距離トレーニングをすると、筋肉内のミトコンドリア量が増えその機能が向上する。具体的には、より多くのエネルギーを脂肪酸から作り出せるようになる。これによってエネルギー源として脂肪酸の利用が増える(筋グリコーゲンの分解量が減る)ので乳酸の生成量が減る。また大きな筋肉の中にあるミトコンドリアは、乳酸を除去するスピードを促進することが知られているという。

 

■乳酸の除去能力を高めるトレーニング・メニュー

これまでに紹介してきたトレーニング・メニューの中では、以下の3つがが強度の高い運動と長距離トレーニングが組み合わされたものであり、「乳酸の除去能力を高めるトレーニング」として有効だと思われる。乳酸除去能力の高さが「鍵」となりそうなレースに出場予定であれば、レース対策のメニューの一つとして取り組むのも一案だろう。

  • ビル・ブラックの「パワーの1時間(Hour of Power)」→リンク

  • 疲労物質除去能力を高めるローラー用インターバル(耐乳酸トレーニング)→リンク

  • 「秘密兵器」・LTインターバル→リンク

 

参考URL

 

参考文献

  • ハンター・アレン アンドリュー・コーガン博士・『パワー・トレーニング・バイブル』・P79・OVERLANDER株式会社