サイクリスト・トレーニング・バイブル【立ち読み版】vol.5 さらなる向上を目指すひたむきな取り組み

【立ち読み版】2012年8月7日 07:34

さらなる向上を目指すひたむきな取り組み

■世界最高の選手達は「常に改善に取り組んでいる」

ランス・アームストロング、タイガー・ウッズ、マイケル・ジョーダンはよく、それぞれのスポーツにおける史上最高の選手であると称えられています。そのような世界最高の選手と、その他の大勢の一流選手との違いは何なのでしょうか。「遺伝」「チャンス」「資質」「栄養」「技術」「精神力」など、様々な要素が考えられますが、もっとも有力なのは、世界最高と呼ばれる選手達は、「常に改善に取り組んでいる」というものです。

 

世界最高峰の選手の例

■ランス・アームストロングの例

伝説的なハード・トレーニングを行っていたことで知られるランス・アームストロングも、その好例です。彼がほぼ毎日、6時間も自転車に乗っていたことや、ツール・ド・フランスの主要ルートを何度も試走していた話は有名です。アームストロングは、食事の内容にも細心の注意を払っていました。

■タイガー・ウッズの例

タイガー・ウッズは、1997年のマスターズで2位に12打差という新記録で優勝した後、しばらく試合から離れ、スイングの改善に取り組みました。その後、PGAツアーで4つのメジャートーナメントに連続優勝するという史上初の快挙を成し遂げたあとも、同じくスイングの改善に専念する期間をとりました。ウッズのこうした姿勢は、プロゴルファー全体に良い影響をもたらしました。

■マイケル・ジョーダンの例

中学生のとき、バスケットボールチームのメンバーに選ばれなかったという体験から、マイケル・ジョーダンはこのスポーツで自らの能力を証明するという決意をあらためて強く固めました。プロとして大成功を収めた後も、決してその栄光に満足したりはしませんでした。バスケットボールファンの間では、ジョーダンがチーム全体のトレーニング終了後も、「弱点」をつぶすために居残り練習をしていたことがよく知られています。

 

「偉大な選手」になるまでには、約10年の集中した取り組みが必要

私たちは、彼らのこうした改善への飽くなき挑戦にまつわるエピソードをよく見聞きします。それは本当に彼らが偉大なスポーツ選手となった最大の要因と言えるのでしょうか? 答えは、イエスです。最近の研究成果は、それが事実であることを示唆しています。さらに、様々なスポーツで「偉大な選手」と呼ばれるレベルに達するまでには、約10年の集中した取り組みが必要であることも示唆されています。アームストロング、ウッズ、ジョーダンの3人の場合も、これが当てはまります。彼らが身をもって示した高いコミットメントは、各種のスポーツの頂点を目指す選手にとって良いモデルになっています。

 

※この記事は、『サイクリスト・トレーニング・バイブル(CTB)』児島修訳・OVERLANDER株式会社(原題:『THE CYCLIST'S TRAINING BIBLE 4TH EDITION』ジョー・フリール著・velopress)の立ち読み版のランダム掲載分です。『サイクリスト・トレーニング・バイブル(CTB)』は、わかりやすく最も信頼のおける自転車トレーニング教本として名高い世界的ベストセラーの日本語版です。■

 

著者紹介

ジョー・フリールジョー・フリール

ジョー・フリールは、1980年から持久系アスリートを指導してきました。依頼者はアマチュアからプロのロードサイクリスト、マウンテンバイク選手、トライアスロン選手、デュアスロン選手、水泳選手、ランナーと多岐にわたります。米国内だけでなく海外の国内チャンピオン、世界選手権に出場するような一流選手、オリンピック選手など、世界中のアスリートが、フリールの指導を受けてきました。

本書以外にも、彼の著書には、『Cycling Past 50』、『Precision Heart Rate Training』(共著)、『The Triathlete’s Training Bible』『The Mountain Biker’s Training Bible』『Going Long: Training for Ironman-Distance Triathlons』(共著)、『The Paleo Diet for Athletes』(共著)、『Total Heart Rate Training』『Your First Triathlon』などがあります。また、フリールは運動科学の修士号を取得しています。

『Velo News』『Inside Triathlon』などの雑誌のコラムニストとしても活躍し、海外の出版物やウェブ・サイトにも特集記事を寄稿。スポーツ・トレーニングの権威として、『ニューヨーク・タイムズ』『アウトサイド』『ロサンゼルス・タイムズ』などをはじめとする、大手出版社などのメディアからも頻繁にコメントを求められています。また、米国のオリンピック関連の各連盟にもアドバイスを提供しています。

フリールは、持久系のアスリートのトレーニングやレースについて、世界中でセミナーやキャンプを行い、フィットネス産業の諸企業へアドバイザーとしても活躍しています。彼は毎年、もっとも将来性の高い優れたコーチを複数名選び、一流のコーチの仲間入りができるよう、彼らの成長を見守っています。

 

訳者紹介

児島 修

1970年生。立命館大学文学部卒(心理学専攻)。スポーツ、ビジネス、ITなどの分野で活躍中。訳書に『ベース・ビルディング・フォー・サイクリスト』(OVERLANDER株式会社)、『シークレット・レース』(小学館文庫)、『マーク・カヴェンディッシュ』(未知谷)などがある。