サイクリスト・トレーニング・バイブル【立ち読み版】vol.74 疲労の原因 グリコーゲンの枯渇

【立ち読み版】2013年1月4日 06:30

グリコーゲンの枯渇

■VO2maxに対する割合ごとのエネルギー需要の変化

脂質は、どのような強度の運動にも欠かせない主なエネルギー源ですが、強度に応じて、エネルギーとなる糖質の割合は大きく変わります。以下の図は、この変化を示したものです。


出典ローミン他1993年

■糖質の体内貯蔵量

食物として摂取された糖質は、グリコーゲンとして筋肉と肝臓に、グルコースとして血中に蓄えられます。

栄養の高い食事をしているアスリートは、体格や体力の状態によって異なるものの、体内に約1,500~2,000kcalのグリコーゲンとグルコースを蓄えています。これは、それほど大きなエネルギー量ではありません。

このエネルギーの約75%は、筋肉に貯蔵されています。

■ハンガー・ノック

問題は、蓄積されたグリコーゲンとグルコースが枯渇すると主要エネルギー源が脂肪になるので、動きが極度に鈍くなることです。サイクリングではこのガス欠状態に陥ることを「ハンガー・ノック」と呼びます。

2時間半のレースでは、3,000kcal程度のエネルギーが消費され、その約半分は糖質をエネルギー源とします。グリコーゲンが不足した状態でレースに臨み、レース中に炭水化物でカロリーが補給できなければ、そのレースではよい結果は期待できません。非効率なペダリングや、もともとの有酸素系の体力が不十分な場合も、同じくよくない結果になるでしょう

■トレーニングによって糖質の貯蔵量が増え・効率的に使えるようになる

研究によれば、トレーニングを積んだアスリートは、そうでない人に比べて糖質を大量に貯蔵し、効率的に使えることがわかっています。エネルギーをどれくらい蓄えられるかや、どれくらい早く枯渇してしまうかは、日頃の食生活も大きく影響します。この点については16章で詳しく説明します。

 

※この記事は、『サイクリスト・トレーニング・バイブル(CTB)』児島修訳・OVERLANDER株式会社(原題:『THE CYCLIST'S TRAINING BIBLE 4TH EDITION』ジョー・フリール著・velopress)の立ち読み版のランダム掲載分です。『サイクリスト・トレーニング・バイブル(CTB)』は、わかりやすく最も信頼のおける自転車トレーニング教本として名高い世界的ベストセラーの日本語版です。■

 

著者紹介

ジョー・フリールジョー・フリール

ジョー・フリールは、1980年から持久系アスリートを指導してきました。依頼者はアマチュアからプロのロードサイクリスト、マウンテンバイク選手、トライアスロン選手、デュアスロン選手、水泳選手、ランナーと多岐にわたります。米国内だけでなく海外の国内チャンピオン、世界選手権に出場するような一流選手、オリンピック選手など、世界中のアスリートが、フリールの指導を受けてきました。

本書以外にも、彼の著書には、『Cycling Past 50』、『Precision Heart Rate Training』(共著)、『The Triathlete’s Training Bible』『The Mountain Biker’s Training Bible』『Going Long: Training for Ironman-Distance Triathlons』(共著)、『The Paleo Diet for Athletes』(共著)、『Total Heart Rate Training』『Your First Triathlon』などがあります。また、フリールは運動科学の修士号を取得しています。

『Velo News』『Inside Triathlon』などの雑誌のコラムニストとしても活躍し、海外の出版物やウェブ・サイトにも特集記事を寄稿。スポーツ・トレーニングの権威として、『ニューヨーク・タイムズ』『アウトサイド』『ロサンゼルス・タイムズ』などをはじめとする、大手出版社などのメディアからも頻繁にコメントを求められています。また、米国のオリンピック関連の各連盟にもアドバイスを提供しています。

フリールは、持久系のアスリートのトレーニングやレースについて、世界中でセミナーやキャンプを行い、フィットネス産業の諸企業へアドバイザーとしても活躍しています。彼は毎年、もっとも将来性の高い優れたコーチを複数名選び、一流のコーチの仲間入りができるよう、彼らの成長を見守っています。

 

訳者紹介

児島 修

1970年生。立命館大学文学部卒(心理学専攻)。スポーツ、ビジネス、ITなどの分野で活躍中。訳書に『ベース・ビルディング・フォー・サイクリスト』(OVERLANDER株式会社)、『シークレット・レース』(小学館文庫)、『マーク・カヴェンディッシュ』(未知谷)などがある。