基礎期における持久力強化のための、L2での走行練習の行い方

【LSD】【冬のトレーニング】【立ち読み版】2020年2月9日 00:15

 

基礎期に最も多く実施するのはL2での走行練習です。目標とするレースの時間が長いほど、L2での走行時間を長くします。

L2での走行は、心拍数やRPEを上げずに維持できる運動強度と持続時間で行います。初心者の場合、このL2での一定の有酸素運動を継続できる時間は15~20分間、上級者になると数時間は維持できるようになります。週に数回は、足を極端に疲れさせることなく、このゾーンでの走行ができなければなりません。

適切な運動強度を把握する方法には、前日に比べて特につらいと感じることなく、毎日同じ運動強度で走行できるかどうかを確かめるというものがあります。つらいと感じたら、その運動強度でその距離を走る準備ができていないか、その運動強度が現時点のL2より高いと考えられます。基礎的な持久力がリミッターである場合、心拍数、RPE、血中乳酸濃度を上げることなくL2で走行できるのは15~20分程度です。持久力が向上すれば、心拍数やRPEが大きく上昇することなく、L2で継続できる時間が長くなります。基礎期が進行するにつれ、L2で出せるパワーも上昇していきます。6~8週間ごとに再テストして確認しましょう。

 

■筋力やケイデンス

基礎期前期のL2での走行は、高い筋力を必要としない、快適なケイデンスの上限で行います。そのためには、勾配が5%未満のゆるやかな上りを走行ルートに選ぶ必要があります。住んでいる地域によっては、このようなコースが見つけにくいかもしれません。その場合は、コンパクトクランクと歯数の多いスプロケットを使えば、高いケイデンスを保ちやすくなり、筋力よりも有酸素性エネルギー供給機構の適応に重点を置けます。

基礎期前期では、ジムでの筋力トレーニングを重点的に行い、徐々にトレーニング負荷を上げていきます。勾配のきつい長い上りでの走行や、重いギアでの高トルク・低ケイデンス走行で筋力を鍛えると同時に、ジムでもトレーニング負荷を増やしてしまうと、オーバートレーニングに陥る恐れがあり、オーバーユースによる怪我や過度の疲労感に見舞われる可能性も高くなります。実走による筋力トレーニングをとり入れるのは、ジムでのMSまたは基礎期前期が終わってからにしましょう。基礎期前期のジムでのウェイトトレーニングが終われば、基礎期中期に移行し、自転車特有の筋力トレーニングを開始できます。

 

■期間

私は、サイクリング歴に関係なく、基礎期前期の少なくとも最初の4~6週間は楽なケイデンスでの走行に重点を置くことをおすすめします。この時点で、経験の豊富なサイクリスト(しっかりとしたベーストレーニングを3年以上行ってきたサイクリスト)は基礎期中期の走行練習を開始できますが、その場合も、週に2~3回はL2での走行を実施しましょう。経験の浅い選手は、6~8週間はL2での走行に重点を置きます。体系的なトレーニングに初めて取り組む選手は、最長で10週間L2での走行に重点を置き、長いAAを完了したうえで、その後の基礎期中期と後期で段階的に高度な走行練習をとり入れていくようにします。

 

■ドリルの実施方法

基礎期前期では、レッグ・スピード・ドリルやフォームスプリントなどの、効率を鍛えるドリルも行います。これらのドリルでは、ごく短時間、パワーや努力度がL2を超えます。以前、きわめて厳格に計画に従う選手数人の、室内練習のパワーデータを見たことがあります。練習時間はきっかり1時間、パワーは各自が決めたL2の5W以内に収まっていました。これほどまでの厳密さで練習目標を維持しようとするのは素晴らしいことであり、メリットも得られるはずです。しかし、現実に応じて柔軟になることも大切です。練習目標には、9割従うことを目指しましょう。たとえば、L1またはL2での練習中にL3以上で数分間走ったとしても、それが走行時間全体の10%未満であればよしとします。初心者はL2に15~30分を費やし、残りはそのすぐ下の運動強度で走行します。上級者はL1で20分間ウォーミングアップし、L2で2時間程度走行します。

 

■PPEとパワーでの概算方法

L2は乳酸値が自分のベースライン値を超え始める地点です。これはRPE(10段階で2~4)で見積もることが可能です。パワーの場合は、有酸素系のベース体力に応じて、FTPの55~75%で概算します。

 

  • 記事出典:トーマス・チャップル著・児島修訳・『ベース・ビルディング・フォー・サイクリスト』(OVERLANDER株式会社)・P219~221の抜粋
    ※本件記事用に、本文を一部加筆修正しています。