インターバルのレスト時間の設定方法 ~レストの長さと様式は、走力の向上にどう影響するのか?~

【FTP・LT・VO2max】【トレーニングメニュー】【期分け・練習計画】【疲労・回復・睡眠】【速くなるためのヒント一覧】2025年8月19日 11:44

インターバルトレーニングは、持久系パフォーマンスの向上に直結する。しかし、強度や本数に比べて「レスト(回復時間)」の設定は軽視されがちである。本記事では、レストの長さと様式が走力の向上にどう関わるかを整理・紹介する。

 

■なぜ「長めのレスト」が有利なのか──パワーを維持し、心肺への過度な負荷を抑制

インターバルトレーニングによる身体能力向上には、長めのレスト設定が有利になることが多い。ただし条件付きである。4分前後の反復では、レストが1~4分の範囲であっても内的負荷(心拍数や酸素摂取量)は概ね同等であり、レストを長めに取るほど速度や外的負荷(パワー:W)を維持やすい。目安として約120秒のアクティブレストが、各インターバルの「質」を落とさず回数を重ねるのに有効である旨示唆されている。長めのレストは「手抜き」や「逃げ」ではなく、「次のインターバルでの追い込みに役立つ準備作業」といえよう。

 

■目的別にレストをデザインする──質・VO2max滞留時間・スプリント

レストの長さは目的に従って決めることが望ましい。一定以上の質(速度・パワー)を維持したいであれば、レストは長めに設定する。酸素摂取量が高レベルで維持される時間(VO2max滞留時間)を稼ぎたいのであれば、レストは短めに設定する(ただし、高強度の時間が短すぎるとVO2max滞留時間が減少するケースもあるので適宜調整が必要)。全力スプリントでは、長めの回復を基本とし、レスト様式は、パッシブ(静止/ごく軽い負荷)とする。絶対的な正解はないといえ、個人差やピリオダイゼーションも考慮に入れて、調整することが望ましい

 

■インターバルの実例

  • VO2max強化(持続時間2~5分)
    例:4分×4本(レスト約2分・アクティブレスト)
    心肺への負荷維持しつつ、パワー(もしくは速度)の低下を抑える設計。
  • 30~60秒の反復
    例:45秒×12本(レスト75~90秒・軽めのアクティブレスト)
    VO2maxを落とし切らずに次へつなぐ。
  • 全力スプリント
    短時間の全力スプリント(レスト3~4分・パッシブレスト~アクティブレスト)
    長いレストを取り、前半はパッシブ寄りにすることでピーク出力の再現を狙う。

 

■回復様式の使い分け──アクティブ/パッシブ

アクティブレストは高強度運動の代謝副産物(乳酸等)の処理に有利な一面があるが、次のインターバルにおける高パフォーマンスを必ずしも保証するわけではない。短時間の全力走の反復の際には、パッシブレストの方が次のインターバルにおける高いパワー出力を維持しやすい傾向がある。一方、持続時間が長めのインターバルではアクティブレストが有効になる。

 

■スプリント系の例外とPCr(クレアチンリン酸)の回復

全力スプリントでは、クレアチンリン酸の半減期は約20~30秒で、ほぼ完全な再合成には2~5分を要するのが一般的。短すぎるレストはピークパワーの低下に直結する。クレアチンリン酸回復速度には個人差があり、3~4分でも完全に回復しないケースもある。したがって、超短時間の全力スプリントを繰り返す場合は、アクティブレストが次のスプリントに悪影響を及ぼす可能性があるため、パッシブレスト寄りの運用が望ましいといえよう。

 

■よくある誤解

「長いレスト=楽で効かない」は誤解といえる。長いレストを設定することで、心肺への負荷が短いレストと同程度でも、より高いパワーで追い込める。短いレストには、VO2max滞留時間を増やす効果が期待できる一方で、長いレストには高い質(パワー)・正しいフォームの維持といったメリットも期待できる。目的に応じて使い分けることが望ましい。

 

■期分けと運用──いつ長く、いつ短く

レース2~3か月前は長めのレストで「絶対パワー値」の向上を目指すことが望ましい。直前の1か月は短回復や分割構成にすることで“疲労が残る中でパワーをしぼりだす能力”を磨く。トップ選手もトレーニング期に応じてレスト設定を切り替える。ただしこの切り替えは個人差に大きく依存するため、個別の調整が必要となる。

 

インターバルトレーニングにおける長めのレスト設定は「質を担保する手段」といえる。VO2max系でもスプリント系でも、所定のパワーの維持を重視する場合は長めレスト設定が望ましい。一方で、VO2max滞留時間を稼ぐ目的であれば、短いレスト設定という選択肢がある。最適解はレベルと時期、目的、個人差で変わる。目標パワーを維持できない等の崩れが顕著な場合は、レストを延長するかインターバルを終了するとよいだろう。インターバルトレーニングのレスト時間の設定は、絶対的な解を求めるよりも、上記原則に即して設計し、各自の反応に合わせて微調整することが、いちばん確実な手法といえよう。

 

参照URL

TrainingPeaks・『Strategizing Rest Periods During Interval Training』・https://trainingpeaks.com/blog/interval-workouts-why-longer-recoveries-are-better/

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