サイクリスト・トレーニング・バイブル【立ち読み版】vol.26 オーバートレーニング症候群(1)速くなるために慢性的な疲労は必要か?

【立ち読み版】2012年10月25日 06:30

オーバートレーニング症候群(1)

■もっと速くなるために慢性的な疲労は必要か?

疲労とスピードには関係があるのでしょうか。つまり、強い疲れを感じるほどのトレーニングを連日行えば、速く走れるようになることは、科学的に証明されているのでしょうか。慢性的な疲労を脚に感じながら毎日の練習に取り組むことで、パワーやレースで必要な体力などを向上させられるのでしょうか。

このような質問をしたのは、常にいくらかの疲れを感じる程度の練習をしていないと、パフォーマンスは上がらないと考えるアスリートがひじょうに多いからです。彼らにトレーニングをする理由を尋ねると、決まって「レースでもっと速く走るため」と答えます。しかし、慢性的な疲労を感じることで、本当に速く走れるようになるのでしょうか。

私は最近、スポーツ・サイエンス系の刊行物をウェブで検索し、疲労とパフォーマンスの関係についての研究結果を調べました。関連の研究は2,036件も見つかりましたが、頻繁に疲労を感じるほどの練習をすることが、アスリートのパフォーマンスを高めることを示す研究は1つも見当たりませんでした。

 

※この記事は、『サイクリスト・トレーニング・バイブル(CTB)』児島修訳・OVERLANDER株式会社(原題:『THE CYCLIST'S TRAINING BIBLE 4TH EDITION』ジョー・フリール著・velopress)の立ち読み版のランダム掲載分です。『サイクリスト・トレーニング・バイブル(CTB)』は、わかりやすく最も信頼のおける自転車トレーニング教本として名高い世界的ベストセラーの日本語版です。■

 

著者紹介

ジョー・フリールジョー・フリール

ジョー・フリールは、1980年から持久系アスリートを指導してきました。依頼者はアマチュアからプロのロードサイクリスト、マウンテンバイク選手、トライアスロン選手、デュアスロン選手、水泳選手、ランナーと多岐にわたります。米国内だけでなく海外の国内チャンピオン、世界選手権に出場するような一流選手、オリンピック選手など、世界中のアスリートが、フリールの指導を受けてきました。

本書以外にも、彼の著書には、『Cycling Past 50』、『Precision Heart Rate Training』(共著)、『The Triathlete’s Training Bible』『The Mountain Biker’s Training Bible』『Going Long: Training for Ironman-Distance Triathlons』(共著)、『The Paleo Diet for Athletes』(共著)、『Total Heart Rate Training』『Your First Triathlon』などがあります。また、フリールは運動科学の修士号を取得しています。

『Velo News』『Inside Triathlon』などの雑誌のコラムニストとしても活躍し、海外の出版物やウェブ・サイトにも特集記事を寄稿。スポーツ・トレーニングの権威として、『ニューヨーク・タイムズ』『アウトサイド』『ロサンゼルス・タイムズ』などをはじめとする、大手出版社などのメディアからも頻繁にコメントを求められています。また、米国のオリンピック関連の各連盟にもアドバイスを提供しています。

フリールは、持久系のアスリートのトレーニングやレースについて、世界中でセミナーやキャンプを行い、フィットネス産業の諸企業へアドバイザーとしても活躍しています。彼は毎年、もっとも将来性の高い優れたコーチを複数名選び、一流のコーチの仲間入りができるよう、彼らの成長を見守っています。

 

訳者紹介

児島 修

1970年生。立命館大学文学部卒(心理学専攻)。スポーツ、ビジネス、ITなどの分野で活躍中。訳書に『ベース・ビルディング・フォー・サイクリスト』(OVERLANDER株式会社)、『シークレット・レース』(小学館文庫)、『マーク・カヴェンディッシュ』(未知谷)などがある。