ベース・ビルディング・フォー・サイクリスト【立ち読み版】vol.1 序文(by ジョー・フリール)

【立ち読み版】2013年2月25日 06:30

序文(by ジョー・フリール)

■世界中から来る基礎期のトレーニングに関する質問

1995年、『サイクリスト・トレーニング・バイブル』を執筆しました。執筆の主目的は、自分自身の理解を深めるためでした。それまで15年間をかけて築いてきたコーチング手法を、論理的に説明し、疑問に答えられるようにしたかったのです。

ところがこの本は、またたく間に大成功を収めました。私は、世界中のアスリートが、この本を読んでいることを知っています。なぜなら、この10年間、私のところには世界各地の多くの読者から、電子メールで質問が寄せられるようになったからです。そしてその多くは、基礎期(ベース期)のトレーニングに関する質問でした。

■基礎期はもっとも理解されにくい

基礎期は間違いなく、シーズンの各期間のなかでももっとも理解されにくく、また選手を困惑させる期間です。シーズンのこの時期は、変化に乏しい単調なものに映るために、選手は何をすべきか戸惑ってしまうのです。

■基礎期には、単純に距離を刻むだけではいけない

このため、過去数十年にわたって、本格的にサイクリングに取り組む選手にとって、基礎期はただ1つのことを意味してきました。つまり、「長い距離を走る」です。

しかし、現在ではもうそれでは十分ではありません。基礎期は「シーズン初期のトレーニング」であり、単に距離を刻むことよりもはるかに多くのことが求められるのです。基礎期にただ距離計のみを見て過ごしたアスリートは、レースシーズンには、はるか先の先頭集団を追いかけて走ってばかりになってしまうでしょう。

■「基礎期の説明」に1冊すべて費やした本

私は『サイクリスト・トレーニング・バイブル』でも、この点について1章を費やして説明したのですが、多くのアスリートは依然としてベース期の重要性をよく理解していません。

トーマス・チャップルは、本書『ベース・ビルディング・フォー・サイクリスト』によって、私が1章のみで試みたこのテーマの説明に、1冊すべてを費やしました。この本を読めば、1年のなかでも極めて重要なこの時期について、深く、幅広く理解できるようになるでしょう。その効果は、レースの結果となって現れるはずです。

■基礎期のトレーニング方法の明確な記述

私は2002年にトーマスに会い、その後、彼を「ウルトラフィット・パートナー」に招きました。ウルトラフィット・パートナーとは、私が1992年に設立した、同じ志を持つ持久系コーチの協会です。この原稿の執筆時点で、この協会には34名のメンバーがいます。私はこの協会のメンバーには、もっとも優れたコーチのみを選び、私のユニークなコーチングの方法論を教えています。

本書には、ウルトラフィットのコーチが、選手の指導に用いているトレーニングコンセプトの概要が記されています。トーマスは本書で、1年のなかでももっとも重要な期間に、どのようにトレーニングすべきかを明確に記述しています。

読者の皆さんは、本書に従ったトレーニングを行うことで、優れた体力の基盤をつくりあげたうえで、レース・シーズンを迎えられるようになるでしょう。

ジョー・フリール、 アリゾナ州スコッツデール、 2006年11月

 

※この記事は、『ベース・ビルディング・フォー・サイクリスト』児島修訳・OVERLANDER株式会社(原題:『BASE BUILDING for CYCLISTS』トーマス・チャップル著・velopress)の立ち読み版です。『ベース・ビルディング・フォー・サイクリスト』は、『サイクリスト・トレーニング・バイブル(CTB)』を下敷きにした、1年のなかでも最も重要でありながら、最も理解されにくい時期でもある「基礎期(ベーストレーニング期)」に、どのようにトレーニングすべきかを詳しく掘り下げた好著です。■