無酸素持久力のトレーニング方法 ~シーズンを通した全体の流れ~【CTB】

【期分け・練習計画】【立ち読み版】2014年10月16日 00:01

無酸素持久力のトレーニング方法 ~シーズンを通した全体の流れ~

■血中乳酸の除去、緩衝能力を強化する

無酸素持久力のためのトレーニングには、VO2maxを鍛えるための耐乳酸反復インターバル(付録 Cを参照)が含まれます。強化期に入ると、ベテランの選手はインターバル・トレーニングを段階的に行い、VO2maxをピークまで高めていきます。強化期の最後の数週間には耐乳酸反復インターバルに取り組み、血中乳酸の除去、緩衝能力を強化します。

■2種類のメニュー

無酸素持久力の練習メニューには 2種類あります。どちらもインターバルがベースになります。1つは、VO2max程度のパワーでのトレーニングです。これは CP6に相当するパワーです。心拍計や主観的運動強度を指標に練習している場合は、心拍数ゾーンは5b、RPEは18~19を目安とします。インターバルの時間と回復走の時間はいずれも 3分とします。シーズンが進み体力が向上するにつれて、インターバルの時間を短くしていきます。

もう1つのメニューは、高強度のインターバルが繰り返しかかる局面に備えるものです。1分未満の短時間にかなり高いパワーを絞り出すインターバルを短い回復走を挟んで繰り返します。このメニューはクリテリウムにかなり近い内容だといえます。

この種の練習によって、乳酸の除去、緩衝能力に負荷をかけ、大量の乳酸を迅速に除去し処理できるようにすることで、レースの熾烈な局面への耐性を高めます。ただし、練習そのものは楽ではありません。このトレーニングは、何週間にもわたって頻繁に行いたいものではないでしょう。これは、もっとも頑張る必要がある苦しいトレーニングです。

■注意点

無酸素持久力のトレーニングはひじょうに負荷が高いので、初心者の段階ではトレーニングに組み込まないようにしてください。少なくとも最初の2年間でスピード・スキルと持久力の基礎をしっかりと固めてから、この種のトレーニングに定期的に取り込むようにします。無酸素持久力のトレーニングを早過ぎる段階で行ったり、ハードにし過ぎたりすると、燃え尽きやオーバートレーニングを引き起こしかねません。

 

※この記事は、『サイクリスト・トレーニング・バイブル(CTB)』児島修訳・OVERLANDER株式会社(原題:『THE CYCLIST'S TRAINING BIBLE 4TH EDITION』ジョー・フリール著・velopress)の立ち読み版のランダム掲載分です。『サイクリスト・トレーニング・バイブル(CTB)』は、わかりやすく最も信頼のおける自転車トレーニング教本として名高い世界的ベストセラーの日本語版です。■

 

著者紹介

ジョー・フリールジョー・フリール

ジョー・フリールは、1980年から持久系アスリートを指導してきました。依頼者はアマチュアからプロのロードサイクリスト、マウンテンバイク選手、トライアスロン選手、デュアスロン選手、水泳選手、ランナーと多岐にわたります。米国内だけでなく海外の国内チャンピオン、世界選手権に出場するような一流選手、オリンピック選手など、世界中のアスリートが、フリールの指導を受けてきました。

本書以外にも、彼の著書には、『Cycling Past 50』、『Precision Heart Rate Training』(共著)、『The Triathlete’s Training Bible』『The Mountain Biker’s Training Bible』『Going Long: Training for Ironman-Distance Triathlons』(共著)、『The Paleo Diet for Athletes』(共著)、『Total Heart Rate Training』『Your First Triathlon』などがあります。また、フリールは運動科学の修士号を取得しています。

『Velo News』『Inside Triathlon』などの雑誌のコラムニストとしても活躍し、海外の出版物やウェブ・サイトにも特集記事を寄稿。スポーツ・トレーニングの権威として、『ニューヨーク・タイムズ』『アウトサイド』『ロサンゼルス・タイムズ』などをはじめとする、大手出版社などのメディアからも頻繁にコメントを求められています。また、米国のオリンピック関連の各連盟にもアドバイスを提供しています。

フリールは、持久系のアスリートのトレーニングやレースについて、世界中でセミナーやキャンプを行い、フィットネス産業の諸企業へアドバイザーとしても活躍しています。彼は毎年、もっとも将来性の高い優れたコーチを複数名選び、一流のコーチの仲間入りができるよう、彼らの成長を見守っています。

 

訳者紹介

児島 修

1970年生。立命館大学文学部卒(心理学専攻)。スポーツ、ビジネス、ITなどの分野で活躍中。訳書に『ベース・ビルディング・フォー・サイクリスト』(OVERLANDER株式会社)、『シークレット・レース』(小学館文庫)、『マーク・カヴェンディッシュ』(未知谷)などがある。