サイクリストが準備期に完了しておかなければならないことと「準備期のチェックリスト」【BBC】

【初心者のためのヒント】【期分け・練習計画】【立ち読み版】2016年10月27日 12:15

基礎期前期のトレーニングを開始する前(準備期)に、完了しておかなければならないことがいくつかあります。これは、年間トレーニング計画の作成が重要な理由でもあります。事前にトレーニング全体を計画し、最初の重要なレースの前に特化した高度な練習ができるように、それまでに基礎期のトレーニングを終えておく必要があります。

アスリートの多くが基礎期を短くせざるを得なくなります。十分な余裕を見て計画を立てなかったために、気がつけば大事なレースまであと12週間しかないという状況に追い込まれてしまうからです。

私もよく、最初の大事なレースまで3か月しかないという選手からコーチの依頼を受けます。なかには、コーチが見つからないままレースシーズンを迎えた選手もいます。大事なレースの6か月以上前であれば、トレーニングのなかで最も重要なベーストレーニングを、しっかりとした計画に従って焦らず効果的に行うよう指導できます。

 

■準備期のチェックリスト

準備期の間(基礎期前期の開始前)に、以下を実施しておきましょう。

  • レースシーズン後に、回復を目的とした移行期を設ける(2~4週間)
    基礎期前期のトレーニングを始める前に、今後数か月にわたるトレーニングに向けて、心身ともに準備ができている必要があります。時間をかけて前シーズンのトレーニングによる足の疲労をとり除き、トレーニング計画の妨げにならないよう、プライベートでの大きな用事も済ませておきましょう(例:自宅の壁のペンキ塗りは、この移行期に済ませておく)。移行期や準備期に運動をしても構いませんし、できれば行うべきです。ただし、この時期のエクササイズは楽しみながら行うようにしましょう。
  • AAと、可能であれば、MTのウェイトトレーニングを完了する
    上級者は、基礎期前期の開始と同時に、ジムでの MSのメニューを始める必要があります。MS には、AA と MTを終えてから移行しなければなりません(筋力トレーニングの各段階についての詳細は12章を参照)。
  • 全体的なトレーニング計画を作成する
    まずレースシーズンの開始時期を決めて起点にし、そこからさかのぼってベーストレーニングの期間を十分に確保した、スケジュールを作成します。
  • サイクリング関連の怪我を完治させる、またはトレーニングによって完治のプロセスが妨げられない程度まで治癒の状態を進行させておく
    無理をしてトレーニングを再開することで、かえって体力が低下してしまったら意味がありません。怪我を押してトレーニングをしようとすれば、ベーストレーニングを始めからやり直したり、トレーニングの進捗がたびたび中断されるといった状況に陥りやすくなります。怪我がほぼ治りかけているのであれば、基礎期前期のトレーニングを始めることは可能です。治りかけのときは、クロストレーニングで体力を高めるようにしましょう。
  • コーチのアドバイスを受ける
    コーチの指導のもとで練習をしていく場合は、ベーストレーニングの開始前からコーチに指導を依頼しましょう。トレーニング計画や日々のスケジュールについて、適切なアドバイスを受けられるはずです。この時期には、コーチとの関係を評価するよい機会でもあります。必要ならば、別のコーチを探しましょう。

 

 

※この記事は、『ベース・ビルディング・フォー・サイクリスト』児島修訳・OVERLANDER株式会社(原題:『BASE BUILDING for CYCLISTS』トーマス・チャップル著・velopress)の立ち読み版です。『ベース・ビルディング・フォー・サイクリスト』は、『サイクリスト・トレーニング・バイブル(CTB)』を下敷きにした、1年のなかでも最も重要でありながら、最も理解されにくい時期でもある「基礎期(ベーストレーニング期)」に、どのようにトレーニングすべきかを詳しく掘り下げた好著です。■

 

著者紹介

トーマス・チャップル

ウルトラフィット・コーチング・アソシエイト。USAサイクリングおよびUSAトライアスロンで、公認コーチとしてエリートレベルの選手のコーチを行っている。1997年に専業のコーチとなって以来、指導してきた選手は、全米および世界のレースで優秀な成績を収めてきた。チャップルの指導した選手は、ハワイのアイアンマン世界選手権のエイジ別入賞やアマチュア部門での優勝、全米プロ/エリート・クリテリウム選手権の上位入賞、NORBA全米シリーズの年代別部門、24時間単独マウンテンバイク・レースの優勝などの栄光に輝いている。

トレーニングやサイクリング関連の定期刊行物、ウェブサイトに定期的に記事を寄稿。そのコーチングスタイルは、短期・長期の目標への到達を目指すトレーニングプロセスにフォーカスしながら、バランスと一貫性を重視していくというものである。選手時代は、全米レベルのダウンヒルのマウンテンバイク・レースや、地元のロードおよびトラック競技の選手として活躍した。詳細は、ウェブサイト(www.coachthomas.com)を参照。

 

訳者紹介

児島 修

1970年生。立命館大学文学部卒(心理学専攻)。スポーツ、ビジネス、ITなどの分野で活躍中。訳書に『サイクリスト・トレーニング・バイブル』(OVERLANDER株式会社)、『シークレット・レース』(小学館文庫)、『マーク・カヴェンディッシュ』(未知谷)などがある。