サイクリストとして知っておきたい「基礎的な体力要素」 ~高度な体力要素の向上を左右する土台となる能力とは?~【BBC】

【初心者のためのヒント】【期分け・練習計画】【立ち読み版】【速くなるためのヒント一覧】2016年12月8日 14:39

■体力の構成要素■

より速く、より長く走るためには、基礎的な体力要素と高度な体力要素の両方を鍛える必要があります。基礎的な体力要素は「持久力」「筋力」「効率」です。高度な体力要素は「筋持久力」「無酸素持久力」「スプリント・パワー」です。高度な体力要素のうちの何が能力を伸ばすうえでの妨げになっているのか、たいていのサイクリストにはわかります。しかし、高度な体力要素の向上はすべて基礎的な体力要素次第であるということを、多くのサイクリストは理解していません。もちろん、高度な体力要素を鍛える必要はあります。しかし、筋持久力の向上には、持久力と筋力をどれだけ構築しているかに大きく影響されます。同じく、無酸素持久力の向上には持久力と効率が、スプリント・パワーの向上には筋力と効率が重要になります。基礎的な体力要素をしっかりとつくり上げているかどうかが、高度な体力要素の向上を左右するのです(図6.1を参照)。

BBC 図6.1 基礎的な体力要素と高度な体力要素

 

■基礎的な体力要素■

基礎的な体力要素が不足していると、高度な体力要素を高めにくくなります。体力の上限を引き上げるには、基礎的な体力要素の強化が不可欠です。毎年、基礎的な体力要素を鍛えるための期間を設けるのもこのためです。

基礎的な体力要素(持久力、筋力、効率)が、高度な体力要素(筋持久力、無酸素持久力、スプリント・パワー)を支えています。土台となる基礎的な体力要素が広く強固なほど、高度な体力要素を高く押し上げることができます。

基礎的な体力要素は、レースの種類に関係なく、パフォーマンスを発揮するために欠かせない能力です。サイクリングを始めたばかりの選手は、最初の数年はこの基礎的な体力要素に重点をおいてトレーニングを行いましょう。また、経験年数に関係なく、どの選手も毎年ベーストレーニングに戻って基礎的な体力要素を鍛えるべきです。一貫したベーストレーニングを行う年数が長くなるほど、年々、このベーストレーニングの期間を短縮していきます。

たいていのサイクリストは、基礎的な体力要素の1つか2つ、ときには3つすべてが向上の障壁になります。私たちは、レースでよい成績をあげたり、速く走れるようになるためには、高度な体力要素が最も大切だと考え、トレーニングでもこれらの要素を鍛えることを重視しがちです。しかし、この考えは正しくありません。高度な体力要素は毎年、比較的短期間で向上させることができますが、基礎的な体力要素の強化にはさらに長い期間が必要になるからです。

 

■持久力

サイクリングは持久力のスポーツです。持久力とは、疲労の発生を遅らせる能力であり、ロングライドやレースを完走するために不可欠です。距離が長くなるほど、持久力を高めることが重要になります。持久力が高まると、体は有酸素性エネルギー供給機構を通じて脂肪を効率よく燃やせるようになり、糖質を節約しやすくなります。スプリンターであっても、持久力トレーニングをおろそかにしてはいけません。スプリントで勝負をするには、ゴール付近まで長い距離を走らなければならないからです。

基礎的な体力要素のなかで、持久力は鍛えるのに最も長い時間を要します。力強い有酸素エンジンをつくり上げるためには、長い年月をかけて体を適応させていくことが必要なのです。持久力は、より強いオールラウンダーになるための土台になります。そのためには、毎年、持久力を鍛えるためのトレーニング時間を十分に設けなくてはなりません。トレーニングを開始した最初の1年でも、集中してトレーニングに取り組めば、持久力が大幅に向上するはずです。ただし、運動強度を上げすぎないように気をつけましょう。基礎期の練習がきつすぎて、その後に持久力が落ちてしまうアスリートもいます。

 

■筋力

筋力とは、抵抗に打ち勝つ能力です。サイクリングとは、風や重力などに負けずにペダルを踏むことでもあります。筋力トレーニングでは、これらの外的な力にあらがうための能力を鍛えることを目的とします。また、優れた持久力と組み合わさることで、筋持久力が向上します。筋持久力が高まると、重いギアを長時間回せるようになります。筋力の強化によってペダルをこぐ力が強くなり、上りも速く走れるようになります。

私の経験上でも、適切な筋力トレーニングプログラムはサイクリストにとって非常に有益です。ベーストレーニングの期間中に筋力トレーニングを行うことで、パワー出力を大幅に向上させる選手も多くいます。私がおすすめするプログラムでは、体幹の筋肉と安定筋を強化し、そしてペダルにより大きな力を加える能力も鍛えます。また、怪我やパフォーマンスの低下につながる、筋肉のバランスの悪さにも対処します。筋力トレーニングはジムでのウェイトトレーニングから始め、徐々にサイクリングに特化した練習に移行します。

 

■効率

本書では、スムーズかつ効率よく自転車に乗る技術のことを、「効率」と呼びます。効率には、ペダリング・スキル、ポジション、筋肉の緊張/弛緩(リラックス)、コーナリング、上り、ドラフティング、下り、スプリントなどが関連します。効率のトレーニングでは、筋肉の協調性と、当然ながら効率を改善することを目的とします。効率を高めるための練習では、負荷を軽くし、ケイデンスを上げてペダリング・スキルを磨くドリルを行います。この種の練習は、走行技術と、走行中にリラックスする技術の向上にも役立ちます。効率は、普段のトレーニングでも改善していけるので、日常的に練習に取り入れるべきです。効率が高まれば、少ないエネルギー消費でより速く、遠くまで走れるようになります。

効率の技術が不足しているアスリートは、持久力や筋力を駆使しても、出せるはずのスプリント・パワーや無酸素持久力を発揮できません。それぞれの筋肉がうまく協調して動かなければ、エネルギーの浪費につながります。消費するエネルギーが少ないほど、激しく速く走らなくてはならないときのためにエネルギーを温存できます。

通常よりも高いケイデンスで走行するときのことを考えてみましょう。それを不快に感じ、サドルの上で尻が跳ねてしまう感覚になるのはなぜでしょうか?それは、高ケイデンスでのペダリング効率が悪いからです。相補的な働きをする足の筋肉が協調して弛緩・収縮をしないので、ペダルを下死点から引き上げるべきときにも、ペダルを下に踏み込んでしまっているのです。筋肉を連動させながらペダルをスムーズかつ効率的に回せるように訓練をすれば、効率は上昇します。他のさまざまな技術と同じく、大切なのは練習です。

有酸素能力が際立って優れた選手が、ドラフティングやコーナリングなどの技術が不足しているために、集団にうまくついていけないケースがあります。このような選手には、大集団の後方の位置に終始したり、前の選手のホイールのすぐ後ろにうまくつけることができない場合が多く見られます。前の選手と間隔が空いていると、集団内で前の選手を風よけにしている状況に比べて空気抵抗が大きくなり、負荷も高まります。サイクリングでは、いかに空気抵抗の(上りの場合は重力も)影響を受けないかが大切です。できるだけ少ないエネルギーで、自転車を前に進める技術を身につけておくことは、きわめて大きな意味を持ちます。

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