心拍数が「高い」ことの意味と「普段より異常に高い場合」の判断・対処方法

【疲労・回復・睡眠】2011年12月21日 09:09

心拍数はパワーなどのように、ロード・レーサーであればもっとも気になる指標のひとつといえる。心拍数が「低い」場合はあまり問題にならないが、「高い」場合は「心臓や血管に何らかの異常があるのではないか」と心配になることもあるだろう。今回は『CYCLIST'S TRAINING BIBLE』の著者であるジョー・フリール氏の「心拍数が高いこと」に対する見解や、「トレーニング中に異常に心拍数が高い場合」の判断・対処方法について紹介する。

 

公式や他の人と比べて高い場合

■心拍数は個人差が大きく、公式は必ずしも当てはまらない

「心拍数が高い」といった場合に、まず問題になるのが「何に比べて高いか」だ。

よく知られている「220から年齢を引くという公式」から出る数字と比較して高いというのであれば、心拍数は個人差が大きいので、この公式で算出される数字からズレがあっても、それだけで異常だとはいえない。この公式ででる数字はあくまで一般論としてのものであり「すべての人にあてはまるものではない」からだ。

仮に大規模な最大心拍数のデータベースがあったとしてそれをグラフ化したら、釣鐘型の正規分布の形状になると予想される。中心部には上記の公式の数値に近い人が多くひしめき、左側には拍数が低い人が、右側には心拍数が高い人が少数分布しているだろう。

■他の人よりも心拍数が高い場合で症状がなければ問題ない

「練習仲間よりも心拍数高い」という場合も、「220-年齢の公式」と本質的には同じ話でありそれだけをもって異常とはいえない。心拍数が高くても、別に何らかの症状(頭がクラクラする、吐き気がする、胸・腕・首・顎に痛みや不快感があるなど)を伴っていない限りは、先ほどの正規曲線の右側に位置しているだけで何ら異常はないので、おそらくそのまま練習を続けても大丈夫だろう。

■心拍数の「高い」「低い」はパフォーマンスを関係がない

こういった通常の心拍数が「220-年齢の公式」や「他の人」と比べて「高い」「低い」ということは、パフォーマンスとは何の関係もない。ある選手は20㎞TT中の平均心拍がわずか145bpm程度と低かったが、全米年代別タイム・トライアル選手権大会で優勝した。他にも最大心拍数が210bpmのランニング選手もいるし、足のサイズがかなり大きい選手もいる。これらの選手は心拍数や体のある部分のサイズが少し他の人と違っているだけで、健康上は何も問題がない。

 

普段よりも異常に高い場合

注意が必要なのは、走行中の心拍数が普段よりも異常に高い場合だ。

■オーバーリーチング・オーバートレーニングなど:負荷を落とすか休息が必要な場合も

まず考えられるのは、オーバーリーチング(短期的に疲労した状態)やオーバートレーニング(慢性的な疲労がたまった状態)のような疲労、カフェインの取り過ぎ、酷暑の中での練習といったことが原因で心拍数が普段よりも10bpm以上高い数値を示す場合だ。これは誰にでも起こりえることで、特に異常なことではない。こういった場合は、状況に応じて練習の負荷を落とすか、思い切って中止して休息したほうがよいケースもあるだろう。

■問題となるケース:健康上、何らかの問題がある可能性がある場合

問題なのは、上記のようなケースには該当しないにも関わらず、ある一定のパワーを出している時の心拍数がいつもより10bpm以上高いケースだ。この場合、心拍計の誤作動が原因でない限り、健康上、何らかの問題がある可能性があるのでいちど医者に行った方がよいといえる。

ジョー氏自身、1994年にハーフ・マラソンの大会中に異常に高い心拍数を記録した。レース自体はスロー・ペースで完走こそしたものの、レース後に医師によってウィルス性心筋炎と診断され、その後7か月間にわたって練習に影響が出たという。他には心房性細動(不整脈の一種)が原因とも考えられる。こういった場合や何らかの自覚症状がある場合は、病院で診察を受けた方がよいだろう。

 

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