大成するのに必要な「計画的訓練」とは

【期分け・練習計画】2012年10月4日 07:00

気ままにその時の思いつきで練習しても相当に速くなる選手はいる。しかし「最高峰のレベルで競い合えるアスリートになるには、必ずといっていいほど計画的なトレーニングが必要になる」との指摘もある。今回は、『良いトレーニング、無駄なトレーニング』などを参考に、「計画的訓練」に関する研究結果などを紹介する。

 

大成するのに必要な「計画的訓練」とは

■計画的訓練とは

計画的訓練とは「単純に動作を繰り返すだけでなく、具体的な目標を定め、パフォーマンスの出来を確認しながら、つねに技術などの向上に努めること」といえる。

目標は、「もっと速くなる」という漠然としたものでは進捗や達成度をチェッできないので、「乗鞍で60分を切る」などといった測定・評価可能な数値で設定する必要があるだろう。

■計画的訓練に時間をかけることの重要性

トロントにあるヨーク大学の研究者ジョー・ベイカー氏によると、スポーツや音楽などで大成できるかは、もって生まれた才能よりも、いかに「計画的訓練」に時間をかけたかによる、と指摘している。

■計画的訓練とレベルの関係:音楽家についての研究事例

フロリダ州立大学のエリクソン氏の音楽家についての研究によると、レベルに応じて計画的訓練の時間に明らかな違いがあったことが示されている。

■18歳までの計画手訓練の平均時間
  • 有名な交響楽団に所属する名演奏家:7,400時間
  • 一般的にプロと呼ばれる演奏家:5,300時間
  • プロを諦めて講師になった人:3,400時間

■1万時間の法則:竹谷賢二さんの例など

MTBで2004年アテネオリンピック出場された竹谷賢二さんは、ブログの中で「世界頂点のレベルに達するまでに「10年1万時間」を練習にあてる必要がある」という「1万時間の法則」を紹介されている。

竹谷賢二さん自身も、24歳~34歳の10年間で1万時間練習することで、オリンピック出場を果たされたとのことだ。

また『サイクリスト・トレーニング・バイブル』の著者であるジョー・フリール氏も、「様々なスポーツで「偉大な選手」と呼ばれるレベルに達するまでには、約10年の集中した取り組みが必要であることも示唆されています」と述べている。

■計画的訓練の重要ポイント

計画的訓練で重要になるのが、トレーニングメニューに細心の注意を払いつつ「質の高さと密度の濃さ、じっくりと時間をかけること」とベイカー氏は指摘している。

またピークに向けて練習に強弱をつけたり、回復週を設けたりするなど、ピーク調整を意識して慎重にトレーニング・スケジュールを練ることも重要になるだろう。

■計画的訓練は「楽しい」

計画的訓練と聞くと「堅苦しくて面白くなさそう」という印象を受けるかも知れない。

しかし意外なことに、オタワ大学のブラッドリー・ヤングとジョン・サルメラによるエリート・ランナーを対象にした研究では、計画的トレーニングこそが、もっとも「楽しい」と感じるトレーニングだということがわかったという。

これは、計画的訓練によって「地道に着実に成果を積み上げること(また日々それを確認できること)」が、練習の「やりがい」につながるからかも知れない。

 

参照URL

  • 竹谷賢二さん・『スポーツ功労賞授与式での講演』・http://takeyakenji.blogspot.jp/2012/03/blog-post.html
  • 日経ビジネスONLINE・『成功は、1万時間の努力がもたらす』・http://business.nikkeibp.co.jp/article/life/20100908/216151/

参考文献

  • アレックス・ハッチンソン著, 児島修訳・『良いトレーニング、無駄なトレーニング』・P324~327・草思社
  • ジョー・フリール著・児島修訳・『サイクリスト・トレーニング・バイブル』・P24~25・OVERLANDER株式会社