特定のタイプのレースで最適なパフォーマンスを発揮するためには6つの能力をどのように組み合わせたらよいか ~各レースで必要な能力を理解するための図~【CTB】

【期分け・練習計画】【立ち読み版】2014年10月20日 00:01

特定のタイプのレースで最適なパフォーマンスを発揮するためには6つの能力をどのように組み合わせたらよいか

■各レースで必要な能力を理解するための図

このセクションの目的は、「特定のタイプのレースで最適なパフォーマンスを発揮するためには前述の6つの能力をどのように組み合わせたらよいか」を紹介することです。あなたの強みが、ある特定のレースで有利に働くことがあるかも知れません。サイクリストとしての能力を全体的に成熟させていくには、リミッターを強化する必要があります。ここでは、トレーニング・プログラム全体に「強み」と「リミッター」の練習をどう組み込んでいくかについても説明します。

各レースで必要な能力を理解しやすいように、前述の三角形をさらに改良したのが以下の図です。

三角形は6つに分割されており、それぞれの領域はそのレースで必要な能力の特定の組み合わせを示しています。皆さんも、自分の強みをもとに6つの領域の中のどれか1つに自分を当てはめることができるはずです。持久力が自分の 1番の強みで、筋力が2番目であれば、持久力寄りで筋持久力が高い、領域 Iのサイクリストということです。基礎能力が2つあるいは3つとも同程度であれば、専門能力から領域を判断できます。スプリンターはスピード・スキルの領域(IVとV)に該当することが多く、ヒル・クライムが得意な人は筋力の領域(IIとIII)、タイム・トライアルが得意な人は持久力の領域(IとVI)に当てはまることが多いでしょう。

■レースを6つの領域に当てはめる

レースもまた、その種類、距離、地形を基準にして、この6つの領域に当てはめることができます。領域 Iのサイクリストがもっともよい成績を収めやすいのは領域Iのレースです。この三角形を使えば、特定の領域でよりよいパフォーマンスを発揮するためには、どこを鍛えればよいかを判断しやすくなります。

次に、能力の領域別にレースを説明していきます。レースの種類ごとの、必要な能力の優先度も示します。当然ながら、強みにはリミッター以上にトレーニング時間を費やす必要はありません。8章ではトレーニングに様々な能力を組み込んでいく方法を、9章では各能力を強化するための詳しい練習内容を紹介します。

■各領域で最優先にトレーニングすべき能力の強化に取り組む

各領域で最優先にトレーニングすべき能力が、対応する表の中ではっきりと示されています。この表を参考にすれば、その領域で最適なパフォーマンスを発揮するために必要なトレーニングをはっきりと確認できるでしょう。トレーニング時間が限られている、もしくはエネルギーに限界がある場合(仕事、家庭、家のメンテナンスなど)、重要なトレーニングを見極め、それに集中しなければなりません。表に示されている3つの「主要能力」のどれかが自分の弱点で、それが優先度Aのレースに必要不可欠ならば、トレーニングではそのリミッターの強化を最優先課題として取り組まなければなりません。残る3つの能力(補助能力)は、レースにおける重要度が低いので、トレーニングにおける優先度を下げ、かける時間とエネルギーは控えめにします(ただし、これらの能力のトレーニングも必要です)。強みがこの3つの専門能力のどれかに当てはまる場合、その能力のトレーニングにそれほど力を入れる必要はありません。

 

※この記事は、『サイクリスト・トレーニング・バイブル(CTB)』児島修訳・OVERLANDER株式会社(原題:『THE CYCLIST'S TRAINING BIBLE 4TH EDITION』ジョー・フリール著・velopress)の立ち読み版のランダム掲載分です。『サイクリスト・トレーニング・バイブル(CTB)』は、わかりやすく最も信頼のおける自転車トレーニング教本として名高い世界的ベストセラーの日本語版です。■

 

著者紹介

ジョー・フリールジョー・フリール

ジョー・フリールは、1980年から持久系アスリートを指導してきました。依頼者はアマチュアからプロのロードサイクリスト、マウンテンバイク選手、トライアスロン選手、デュアスロン選手、水泳選手、ランナーと多岐にわたります。米国内だけでなく海外の国内チャンピオン、世界選手権に出場するような一流選手、オリンピック選手など、世界中のアスリートが、フリールの指導を受けてきました。

本書以外にも、彼の著書には、『Cycling Past 50』、『Precision Heart Rate Training』(共著)、『The Triathlete’s Training Bible』『The Mountain Biker’s Training Bible』『Going Long: Training for Ironman-Distance Triathlons』(共著)、『The Paleo Diet for Athletes』(共著)、『Total Heart Rate Training』『Your First Triathlon』などがあります。また、フリールは運動科学の修士号を取得しています。

『Velo News』『Inside Triathlon』などの雑誌のコラムニストとしても活躍し、海外の出版物やウェブ・サイトにも特集記事を寄稿。スポーツ・トレーニングの権威として、『ニューヨーク・タイムズ』『アウトサイド』『ロサンゼルス・タイムズ』などをはじめとする、大手出版社などのメディアからも頻繁にコメントを求められています。また、米国のオリンピック関連の各連盟にもアドバイスを提供しています。

フリールは、持久系のアスリートのトレーニングやレースについて、世界中でセミナーやキャンプを行い、フィットネス産業の諸企業へアドバイザーとしても活躍しています。彼は毎年、もっとも将来性の高い優れたコーチを複数名選び、一流のコーチの仲間入りができるよう、彼らの成長を見守っています。

 

訳者紹介

児島 修

1970年生。立命館大学文学部卒(心理学専攻)。スポーツ、ビジネス、ITなどの分野で活躍中。訳書に『ベース・ビルディング・フォー・サイクリスト』(OVERLANDER株式会社)、『シークレット・レース』(小学館文庫)、『マーク・カヴェンディッシュ』(未知谷)などがある。