サイクリストとして知っておきたい、月単位のトレーニングブロックの構築方法 ~継続的にパフォーマンスを高めていくために最適なアプローチとは?~

【期分け・練習計画】【疲労・回復・睡眠】【立ち読み版】2019年5月9日 00:15

 

■月単位のトレーニングブロック

週単位のトレーニングブロックでは、3~4日目ごとに休養日や回復日を設定しますが、月単位のトレーニングブロックでは、これと同じように3~4週目ごとに回復週を設けます(図9.1aと9.1bを参照)。

図 9.1a  4週間単位のトレーニングブロック、図 9.1b  3週間単位のトレーニングブロック アスリートによって、3週間のトレーニング週の後に回復週を入れるパターンが効果的な場合もあれば、2週間のトレーニング週の後に回復週を入れた方が効果的な場合もあります。上の図は、トレーニング負荷を週単位で段階的に増やしていきながら最後に回復週を入れるというパターンの例を示しています。

 

トレーニング負荷の総量の把握には、トレーニング時間と強度を反映した指標である「TSS(Training Stress Score)」を用いるとよいでしょう。

週間トレーニングにも休養日を設けますが、2~3日間のトレーニングで蓄積された疲労は、1日の休養では完全に回復できない場合もあります(TSSに対する疲労回復に必要な時間の目安はこちらを参照)。

このため、ある程度の疲労(内部負荷)を体に残したまま、次の2~3日間のトレーニングブロックを開始することになります。このような状態が数週間続くと疲労は、1~2日よりも長い回復期間を必要とする地点に達します。この地点が、回復週を開始するタイミングです。

 

■回復週

回復週には、BT練習や他のハードな練習は一切行わないようにします。回復週では、トレーニング週よりも完全休養日を1日多くし、週間のトレーニング負荷(TSS)を大幅に削減します。十分に練習をしていないという罪悪感を覚える程度まで練習量を落とします。

回復週の終わりの時点では、足の疲労がほとんど抜け、体は必要な適応を終えて新たなトレーニング負荷を受け止められる状態になっていることが理想的です。

モチベーションがきわめて高いアスリートには、回復週をとるという考えに抵抗を示しがちです。以前、ある優秀なトライアスリートのトレーニング記録を見たことがあるのですが、6か月間、まったく回復週がありませんでした。数回、トレーニング負荷を減らしてはいましたが、それは風邪が原因でした。おまけにこの選手は、負荷を上げるために、サドルバッグに鉛の重しを入れ、タイヤには砂を入れていました。彼はすでにアスリートとしてよい成績を収めていましたが、休養をもっと増やすように(そして、サドルバックから鉛を外すように)指導したところ、パフォーマンスはさらに伸びました。

 

■回復週後のテスト

回復週の終了直後は、体力テストを行うよいタイミングです。十分に休養をとった後なので、少なくとも前回のテストでのパフォーマンスと同等以上の結果を出せるはずです。

週のトレーニング負荷(TSS)が中程度で、数週間にわたってうまくスケジュール通りのトレーニングができている場合は、回復週の終わりの日曜日に体力テストを行ってもよいでしょう。

トレーニング負荷が体に蓄積し、回復プロセスを終了するためにさらなる時間が必要な場合、回復週明けの火曜日に、最初の練習としてテストを行うとよいでしょう。

また、テストはトレーニングでもあることを忘れないようにしましょう。特に、CPテストをする場合はそれが当てはまります。

仕事や家庭の関係などで平日のテストが難しい場合は、週末にテストをします。時間の余裕のある週末に実施することで、よいテスト結果が出るケースもあります。この場合は、回復週後、通常のトレーニングを再開した最初の週の土曜日にテストを実施するとよいでしょう(その週の木曜日と金曜日の練習は軽めにします)。

テスト結果が予想よりも低調で、その理由を、日常生活のストレスや悪天候、ウォーミングアップ不足、睡眠不足(あるいは、誰かがタイヤにこっそり砂を入れていた)などのはっきりとした要因で説明できない場合は、次のトレーニングまでに、さらに数日間の回復を入れた方がよいでしょう。

 

■トレーニング週の組み立て方

以下に、トレーニング週の組み立て方の例を示します(以下に再掲する図9.1aと図9.1b の、4週間単位と3週間単位のトレーニングブロックも参照)。

 

  • 1週目
    通常のトレーニング負荷で開始。
  • 2週目
    トレーニング負荷を若干増やす。
  • 3週目
    3週間単位のトレーニングブロックの場合は回復週(1週目よりもトレーニング負荷を少なくする)、4週間単位のトレーニングブロックの場合は、2週目よりもトレーニング負荷を若干増やす。
  • 4週目
    3週間単位のトレーニングブロックの場合は新たに1週目のトレーニング週を開始、4週間単位のトレーニングブロックの場合は回復週。

 

図 9.1a  4週間単位のトレーニングブロック、図 9.1b  3週間単位のトレーニングブロック アスリートによって、3週間のトレーニング週の後に回復週を入れるパターンが効果的な場合もあれば、2週間のトレーニング週の後に回復週を入れた方が効果的な場合もあります。上の図は、トレーニング負荷を週単位で段階的に増やしていきながら最後に回復週を入れるというパターンの例を示しています。

 

■継続的にパフォーマンスを高めていくために

継続的にパフォーマンスを高めていくための最適なアプローチは、「適切なトレーニングを、適切なタイミングで、必要最小限の量を行っていくこと」です。

週間および月間単位のトレーニングブロックには、ハードな練習をする日と、完全休養日を含む回復日を必ず設けるようにしましょう。

トレーニングを継続していけば必然的に、疲労蓄積と破壊が一定度に達する、オーバーリーチングと呼ばれる状態に入ります。この状態は、「超回復」として知られる適応プロセスのために、体にとって必要です。

自分の適応閾値を把握し、オーバートレーニングの症状(低調なパフォーマンスや睡眠障害、休養後にも抜けない足の疲労、頻繁な風邪や怪我、モチベーションの低下、気分の浮き沈み)を見せ始める前に対策を講じることが大切です。トレーニング日誌は、これらの問題のある兆候を早期に検出し、トレーニング計画が台無しになることを防ぐのに役立ちます。

 

 

  • 記事出典:トーマス・チャップル著・児島修訳・『ベース・ビルディング・フォー・サイクリスト』(OVERLANDER株式会社)・P188~191の抜粋
    ※本件記事用に、本文を一部加筆修正しています。