無酸素トレーニングの必要性とパワーメーターによってトレーニング効率が上がる理由 ~ほとんどのロード・サイクリストは、無酸素パワーの向上に十分に取り組めていない~

【トレーニングメニュー】【レース対策情報・レース戦術】【立ち読み版】2018年9月7日 00:00

 

無酸素トレーニング

自転車で走行中にほんの数秒~数分間だけ維持できる強度がどのようなものか、皆さんはご存知だと思います。このような時に必要になる無酸素パワーは、特定のトレーニング・プログラムに取り組むことで強化できます。

研究所では、最大酸素摂取量を測定するためのテストが開発されてきましたが、残念ながら無酸素パワーについては開発がそれほど進んでいません。そこで間接的な方法を使わざるを得ないのが現状です。

無酸素パワーを評価するための最も簡単で実用的な方法は、30秒のオールアウト・テストでの平均パワー出力を調べることです。このテストはシンプル且つ有効です。

 

■有酸素パワー vs 無酸素パワー

ロード・レースは、有酸素性代謝でカバーされる割合が98%以上にも及ぶ有酸素領域のスポーツです。ですから、ほとんどのサイクリストが、閾値パワーを上げるために有酸素系のトレーニングに集中し、無酸素系のトレーニングをそれほど重視しない傾向にあります。

 

「ほとんどのロード・サイクリストは、無酸素パワーの向上に十分に取り組めていません。これが、レースで一気に強度が上がるようなタイミングでのパフォーマンスの足を引っ張っる原因になっています」

 

VO2maxと閾値パワーは、パフォーマンスへのインパクトをもたらす最も重要な生理的な要素です。しかし、多くのレースでは、勝負を決定づける局面があり、そこでは無酸素パワーが必要不可欠なのです。

無酸素パワーが十分なレベルでなければ、他の選手を千切ることはできないでしょう。すばらしいアタックをするには無酸素パワーが必要です。無酸素パワーが欠けていれば、強い選手でも勝てません。

解決策は、無酸素トレーニングに重点を置くことです。前章でも述べたように、パワーメーターかエルゴメーター・バイクを使うことを強くおすすめします。パワーをモニタリングできる機材を導入すれば、無酸素トレーニングがかなりやりやすくなります。

パワーメーターは、インターバル中に正しい負荷をかけるのを格段に簡単にしてくれます(パワーメーターなしでは、40秒のインターバルでペース配分を適切にコントロールするのは相当に困難です)。トラック競技の経験があれば、ペース配分がパフォーマンスにどれほど影響するかわかるかと思います。また、どれくらいのワットを出せたのかや進歩の軌跡をチェックできるので、やる気アップにもつながります。

ロードでのタイム・トライアルでありがちな失敗は、スタート直後のペースが速すぎるというものです(ただし、トラックでの1,000mタイム・トライアルや短いインターバルのような短時間のイベントであれば、それなりに意味はあります)。

インターバルの最後にワットを維持できなくなってしまうようであれば、パワーメーターをペース配分に活用しましょう。適切な強度でより多くのインターバルをこなすことで、数ヶ月後にはトレーニング効率が上がり、よりよい結果につながることを実感できると思います。

 

無酸素パワーの強化方法

トレーニングを始める前に、無酸素パワーのテストを実施することをおすすめします。前にも触れましたが、この能力を直接測定する方法はありません。ただし、無酸素パワーを推定するための最も簡単な方法は、30秒のオールアウト・テストです。

ここでは、無酸素持久力をより高いレベルまで引き上げるのに役立つと思われる無酸素系のトレーニング・プログラムを2つ紹介します。

 

■無酸素パワープログラム1

15分:ウォーミング・アップ(強度を上げていく)

5×(60秒:最大強度+6分:回復走)

 

このプログラムは、無酸素パワーを向上させるためにデザインされています。このインターバル中、体は膨大な量の無酸素系代謝にさらされます。

たった数回程度このメニューに取り組んだだけで、無酸素パワーが必要な状況下で、よりよいパフォーマンスが発揮できるようになるでしょう。この能力は、主として無酸素域での努力が必要なレースにおけるジャンプやスプリントの時に必要になります。レースに向けて準備する時には、こういった「力を出し切るトレーニング」に最優先で取り組むべきだといえます。

 

■無酸素パワープログラム2

15分:ウォーミング・アップ(強度を上げていく)

10×(30秒:最大強度+3分:回復走)

 

このプログラムも、無酸素パワーの向上用にデザインされています。プログラム1に比べるとインターバルが短いので、より高いワットを出せるはずです。プロトンからの飛び出しがうまくいかなかった経験があるのであれば、このインターバル・セッションに取り組むことで、きっとパワフルなアタックができるようになるでしょう。

 

 

  • 記事出典:ジェスパー・ボンド・メデュス著・高嶋竜太郎訳・『短時間 効率的サイクリング・トレーニング』(OVERLANDER株式会社)の抜粋
    ※本件記事用に、本文を一部加筆修正しています。